相澤・頼人 & 瀬之咲・來夢

●今、そこにある温もり

 夕日が沈み、雪が舞う中。
 頼人と來夢のふたりは手を繋いで一緒に、光り輝くクリスマスツリーを見上げていた。
 ……一年前のこの日。
 ふたりは思いを通じ合わせ、付き合う事になった。
 感慨深げに去年のクリスマスを振り返る。
 いまではすべてがいい思い出。
 ゆっくりと記憶を辿っていけば、まるで昨日の出来事のように、ふたりの思い出が蘇っていく。
「……」
 コートを着ていても寒かったのか、來夢がわずかに身体を震わせた。
 繋いでいる手から、その事に気づいた頼人は、彼女をそっと抱き寄せて、自分の着ているコートで包み、さらに彼女からプレゼントしてもらって、自分の首に巻いていたロングマフラーを少し解き、彼女の首にも巻いていく。
「これなら、寒くないだろう?」
 頼人が優しく彼女の耳元で囁いた。
 自然とふたりは密着状態になり、すっかり冷え切っていた体が、あっという間に暖かくなった。
「頼人くん、やっぱり温かい……♪」
 お互いの温もりを感じながら、來夢が幸せそうな表情を浮かべる。
 ずっとこうしている事が出来たら、どんなに幸せでいる事が出来るだろう、と思ったが、密着している事でお互いを意識してしまったのか、だんだん言葉が少なくなっていく。
「……」
 特に交わす言葉も無く、ただ真っ赤になりながら、見詰め合うふたり。
 お互いの心音が次第に高鳴り、独特なリズムを刻んでいる。
 頼人は真剣な眼差しで彼女を見つめ、來夢もそんな彼を見上げるような形で、少し潤んだ瞳を閉じた。
 それだけで頼人は彼女が何を求めているのか察し、自分も静かに目を閉じながら、彼女の唇に自分の唇をそっと重ね合わせていく。
 長いような、短いような、至福の時間。
 ふたりにとっては一瞬だったような気もしたが、実際には随分と長い時間、口づけをかわしていたようである。
「これからもよろしくな、來夢」
 ゆっくりと唇を離し、頼人が微笑んだ。
「こちらこそよろしくね、頼人くん」
 來夢も同じように笑みを浮かべ、頼人と言葉を交わす。
 そして、その表情は二人とも、最高の笑顔に輝いていた。




イラストレーター名:清玲