鈴白・舜 & 上尾・亜衣

●ツリーに飾り付け、亜衣にも飾り付け

 クリスマスは恋人達だけのものではない。もうすぐ仲間達とのクリスマスパーティ。料理やケーキも準備したし、後はクリスマスツリーの飾り付けだけ。舜と亜衣のコンビは、仲良く踏み台を用意して、沢山のオーナメントを協力して取り付けていった。
 舜も亜衣も小柄だから、ツリーの上部の飾り付けは大変だったけれど、何とか舜はライトをツリー全体に巻き付けた。
 その横から、亜衣がオーナメントを手渡す。彼女が無言でも、舜には亜衣が何を言いたいのかわかる。楽しそうに無邪気に笑う亜衣を見て、何かこう、純真無垢な動物の赤ん坊のようだなと舜は思う。
「……今年も色々あって、あっという間だったな」
「うん、結社のみんなと一緒だとあっという間だね」
 薄紙に包まれたグラスボールをそっと取り出し、飾り付けながら亜衣も頷く。色々想い出を話し合いながら飾り付けをすると、地道な作業でもとても楽しくなってくる。
 リボンにハートがぶら下がっているオーナメントを飾り、舜は次のオーナメントを取り出す。赤地に黄色い線が入ったリボンに、銀の星がチェーンで繋がっている。
「亜衣、ちょっと来い」
 思い付いたように舜は亜衣を呼ぶ。
「……? 何、鈴白先輩」
 後で先輩の見えないところで飾ろうと、こっそり子猫のフェルトオーナメントを隠した亜衣が首を傾げる。そのまま、とことこ近付いてきた亜衣の髪に、オーナメントをつけたヘアピンを通し、ぱちんと止めてあげる。
「ん、似合う似合う」
 ニカッと笑いながら、舜は小さな鏡がついたオーナメントを亜衣に渡す。可愛いリボンを見て、舜がつけてくれて、亜衣は幸せになる。
「……♪」
 亜衣がぴょんぴょんとジャンプして、喜んでいる姿が可愛くて、舜はその頭を撫でてやる。
 自然と笑顔になる舜と亜衣。と、2人のいる部屋のチャイムが鳴る。そろそろ他の人が来たようだ。舜と亜衣は急いでツリーの仕上げを始めた。

 ちょっとしたクリスマスの一場面……二人の想い出の中に、また新たな1ページが刻まれた。




イラストレーター名:小林蕪