●Happy Christmas
クリスマスムードに包まれた夜の街に、人々の幸せそうな笑顔が満ちる。
木々を彩るイルミネーションは、柔らかで温かな光を放ち、喧騒に混ざり聞こえてくるクリスマスソングに耳を傾ければ、ついつい口ずさみたくなってくる。
そんな楽しげな雰囲気一杯の街角に、やはり笑顔の直衛とクロランタの姿があった。
ふたりで巻いた長いマフラーが、歩くたびにまるでダンスを踊るかのようにフワフワ揺れる。
「寒くないですか?」
「ぬくいですよ!」
気遣いをみせる直衛に、クロランタは元気な笑顔を向けて応えた。
頬に触れる夜の風は、たしかにちょっと冷たいけれど、しっかり絡められた腕と、触れ合う肩の温もりは、その何十倍も心地よかった。
身を寄せ合って人混みの中を歩いてゆけば、次第にムードが高まってくる。
「ねぇ、クランク先輩」
「なんでしょうか? クロさん」
他愛のない会話の途中、不意にクロランタに名前を呼ばれ、直衛はちょっと不思議そうな表情を彼女へと向けた。
「……ずっと、一緒にいてくださいね?」
その言葉は、明るい笑顔とともに紡がれた。
直衛はフッと微笑みを浮かべると、ずれた眼鏡を上げ直しながら、クロランタの問いかけに答えを返した。
「当然です。貴女は僕の大切なパートナーなのですから……」
ぱぁっと、更に明るさを増すクロランタの笑顔。
絡められた腕の力も、先程よりも幾分強くなっている。
伝わってくる彼女の喜び、温かさ。
どちらにとっても、互いは初めてのパートナー。
それもあってか、互いに寄せる想いと絆は、とても固くて深かった。
───暫し、やさしい時間が流れた。
普段とあまり変わらぬ佇まいの中に、ほんの少しの照れを浮かべた直衛と、いつも通りの明るい天真爛漫な笑顔をみせるクロランタは、どちらともなく、ごく自然に唇を近付けた。
ふわり。
ふたつの唇が緩やかに触れ、弾むようにまた離れる。
ふたりは少し照れ臭そうに微笑み合うと、マフラーを巻き直して肩を寄せ合い、またゆっくりとした足取りで歩き出した。
イルミネーションの輝く街角を、ぴったり寄り添って歩くふたり。
クリスマスの夜もふたりの関係も、まだ始まったばかり。
ゆっくりと一歩ずつ、ともに幸せを分かち合い、感じ合いながら歩いてゆこう……。
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