ツカサ・カミナギ & 御堂・十六夜

●可愛いあの子は割りとやるもんだね〜と

 街の中はきらめくクリスマスイルミネーション。
 腕を組み、煌びやかな街並みを歩いていくツカサと十六夜。
 楽しげ交わしていた会話の途中、アイスクリーム屋を見つけた十六夜は、ツカサの腕をぐいぐい引っ張って、行こう行こうとねだる。
 十六夜に折れたツカサは、十六夜に腕を引かれるままに、連れていかれる。
 十六夜はくるりとツカサの方を向くと、にっこりと笑いかける。
「ねぇ、ツカサさん?」
「ん?」
「……食べていきません、アイス?」
「…………」
「いきましょうよー」
「今冬だろ? お腹壊すぞ?」
「大丈夫です、アイスは万病の薬です」
「それはお前だけだろ…?」
 満面の笑みの十六夜の言葉に、わざと何も応えないツカサ。しかしそんな事は予想範囲内と、さらに十六夜は食いつく。
 ツカサの腕を掴んで、左右に軽く振ったりしながら、アイスクリーム屋のショーケースから離れる気配もなく粘る。
 そんな十六夜に、ツカサは少々呆れ顔なのだが、結局、ツカサが根負けして、ツカサが店内のカウンターでアイスクリームの注文をすることになる。

「あ、このバニラ美味しそうですよ、ツカサさんっ♪」
「何段にするんだ?」
「五段ですっ!」
「……」
「ダメですか…?」
 ショーケースにかぶりつきの十六夜。
 バニラもおいしそうだけど、隣のチョコもおいしそう。
 あれもこれもそれも。
 この中から決めるなんてなんて難しいのだろう。
 そしてツカサからの質問には、さらりと答え、ツカサが言葉をなくすものの、ツカサが何も言わず呆れたような表情に、思わず泣き出しそうに眉をしかめだす。
 するとツカサは店員の方に向いた。
「……五段で」
「わぁ♪ ツカサさん大好きですっ!」
 ため息交じりのオーダーだったけど、ツカサの言葉を聴いた十六夜は、今にも泣き出しそうな顔から、満面の笑みへと変わってしまう。
 何だかんだで、恋人には甘いツカサ。
 高く積み上げられたアイスを受け取り、幸せそうな十六夜。
 そんな彼女の様子を、ツカサは呆れ顔ではなく優しく見つめていた。




イラストレーター名:宮間きよ