桂・馬太郎 & 飛葉・彰吾

●食らえ!聖夜の空中殺法!

「よっしゃあ! 稼ぐでー!」
 赤貧な結社の活動資金を稼ぐ為、表向きは普通の牛乳販売所である店舗の前に即席のXmasケーキ販売所を作り、桂が手製のケーキを売ろうと張り切っていた。
「わざわざ客を追い払うような服を着てどうすんだ……」
 それとは対照的に飛葉の方は、無理矢理サンタ姿で売り子を手伝わされ、げんなりとした表情を浮かべている。
 しかも、桂の格好はパンツが見えるほど短い、ミニスカサンタ服……。
(「……一体、誰が特するんだ、あれ」)
 と飛葉は思っていたが、
「何をゆうとるねん! 客寄せにお色気は外せへんポイントやろ!?」
 桂は『この格好じゃなきゃ、逆に客が呼べんやろ』と言いたげな表情を浮かべ、飛葉の意見に食って掛かる。
「そんなお色気はスカートごと捨ててしまえ」
 瞼の裏にまで焼きつきそうなトラウマビジョンから逃れるため、飛葉が胸倉を掴む勢いでツッコミを入れた。
 本音を言えばそのままどぶ川に放り投げたいところだが、そんな事をすればひとりでケーキを売る羽目になるので、沸々と湧き上がっていた怒りを抑える。
「この寒空にぱんちゅ一丁になれと!?」
 驚いた様子で目を丸くさせ、桂がミニスカサンタ衣装を胸元を掴む。
 ……一瞬、パンツが見えそうになった。
(「だ、駄目だ。ここで殺らねば、俺がやられる!」)
「……いっそお前ごとゴミ箱に行け……!!」
 色々な意味で気の危険を覚え、飛葉がプロレス技を繰り出した。
 もともと人通りの少ない場所だったので、昼になってもなかなかケーキが売れていなかったのだが、ふたりが大喧嘩を始めた事で野次馬達が集まり、おひねり代わりにケーキが次々と売れていく。
 おのおかげもあってケンカの巻き添えを食らって潰れたケーキを除き、夜になるまでには綺麗さっぱり完売した。

 ……その夜。
 桂お手製の鍋と、潰れたケーキが振舞われ、飛葉の機嫌も大分良くなってきた。
(こいつ、料理だけは上手いよな……)
 しみじみとした表情を浮かべながら、飛葉がケーキをパクついていく。
「あ、ケーキ食うんやったら飲みもんいれたるし。紅茶? コーヒー? ……それとも、オ・レ?」
 そんな飛葉の気持ちを木っ端微塵に破壊する勢いで、桂がパンツをチラリと見せる。
 その途端、飛葉の中で眠りにつこうとしていた怒りが目覚め、今にも爆発しそうな勢いで膨らんでいく。
「じゃー、お前」
 額にイラッと青筋を立て、飛葉がヤケになって桂を指名する。
「……えっ?」
 桂も予想外の答えに驚き、明らかに動揺した様子で汗を流す。
 そして、ふたりの間には何とも言えない気まずい空気が流れ、後に引けない状況のまま、極寒の聖夜が過ぎていくのであった。




イラストレーター名:中星中