●二人の聖夜〜イルミネーションツリーの前で〜
クリスマスの夜、街にはどこかしこにイルミネーションが瞬いて、まるで地上に星が降りてきたようだ。
「あっちに行ってみようか、槇姉」
金色の電飾で飾られた並木道へと、源夜が槇名を誘う。
「……はい」
小さく頷いた槇名は、純白のウェディングドレスを着ている。
「お手をどうぞ」
手を差し伸べる源夜は、白いタキシード姿。
白いヴェールの陰で頬を染めながら、槇名は白い手袋をはいた手をそっと差し出した。
微笑んで、源夜がその手を取る。
2人で過ごす、最初のクリスマス。きっと大切な思い出になるこの日に、大好きな気持ちをたくさん伝え合いたい。そんな恋人同士を、枝に星を宿したように瞬くイルミネーションツリーたちが照らし出す。
まるで星空の中を歩いているように、足元がふわふわする。槇名がそんなことを思っていたら、体が本当にふわりと浮いた。
お姫様のように抱っこされているのだと、気がついた時には源夜の顔がすぐ近くにある。
驚いたけれど、照れるけれど、抱き上げてくれている腕の強さや、間近に感じる体温が嬉しくて。
「……源君……私、貴方の傍に居られて本当に良かったです……大好き、私の大好きな源君……」
槇名はつい、頬をふわりと緩ませる。それは、幸せそのものが花開いたような笑顔だった。
「……槇姉があの時助けてくれて……そして、こうして一緒にいられて、僕は最高に幸せです……」
源夜は、槇名をじっと見詰めながら囁いた。吐息の届く距離。
「だから、この気持ちを受け取って……」
そっと、落とされた唇は、槇名の頬に触れる。
口付けは温かく優しく、彼の体温と共に、その気持ちを槇名にしっかりと伝えてくれた。
「……あ、あぅ……」
突然のことに頭が真っ白になった槇名は、顔を真っ赤にして口ごもる。
そんな槇名を見て、源夜は微笑んだ。それはさっきの槇名と同じ、幸せそのものの笑顔だった。
この人と会えて良かった。恋人を抱く腕に力を込めながら、源夜は思う。
(「……神がいるなら感謝します……この出会いを結んでくれた事に」)
これからも、この人とずっと一緒に居たい。
イルミネーションツリーの下で、源夜も槇名も、同じことを強く願っていた。
「……源君」
「……槇姉」
名前を呼んだのは同時で、なんだかおかしくなって、2人はクスリと笑いあう。
「「メリークリスマス♪」」
言おうとしていたことも、同じだった。
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