●……めりくりらぶ…りー…?
クリスマスに彩られた街中をショッピングする、ふたり。
その途中で、いかにも可愛い系のぬいぐるみやね衣類、家具、小物などが置いてある雑貨屋が目に入り、いつかがぐいぐいと礼の腕を引っ張り、店の中に入っていく。
店内に置かれている商品は、どれもファンシーな雰囲気が漂っており、礼は何となく居た堪れない気持ちになった。
だが、礼も可愛いものが好きなので、それなりにぬいぐるみをふかふかしたり、『彼女に似合うかなー』と思いつつ、髪飾りを眺めて時間を潰す。
「……ん?」
突然、頭の上にふわふわもふもふとした感触が襲う。
礼は何事かと思い、頭上に視線を送る。
その途端にいつかがぐいっと礼の腕を掴み、そのまま鏡の前まで連れて行く。
鏡に映っていたのは、ポンポンと耳当てつきのニット帽を被った自分の姿。
(「ちょっと可愛いな、これ」)
そんな事を考えながら、礼が気まずい様子で汗を流す。
(「どうでもいいけど、これって女性用……だよな」)
自らに問いかけるようにしながら、礼が改めて自分の姿を確認する。
どう見ても、女性用。
傍らには胸の前で両手を合わせ、いつかがニコニコと笑う。
……物凄く嫌な予感がする。
「可愛い」
いつかがボソリと呟いた。
「いや、確かに可愛いけど……」
いまひとつ強く出られず、礼が困った様子で口ごもる。
礼としてはどうにか誤魔化して、うさぎさんのような帽子をプレゼントされるのだけは回避したいのだが、なかなか上手い言葉が見つからず、無駄に時間ばかりが過ぎていく。
「耳あてがうさぎさんみたいでかわいい。それにポンポンも、うさぎさんのしっぽみたいでかわいい……」
満面の笑みを浮かべながら、いつかが礼の被っている帽子を褒めた。
「あー、そうかも、ポンポン……って、駄目駄目」
ポンポンを触ってもふもふとした後、礼が自分を戒めるようにして激しく首を横に振る。
「ね?」
まだ、未練が残っている様子で、いつかが瞳を潤ませた。
「だから、『ね?』じゃなくて……。それなら、自分で被ればいいのに。きっと可愛いと思うけど……」
しかし、いつかが首を横に振る。
「自分で被ったら見えないでしょう」
とキッパリ。
「なるほどね。……って、危うく納得するところだった。それじゃ、代わりにこれをプレゼントするから、機嫌を直してよ」
このままでは帽子を被らなくてはならないため、礼が近くにあったポンポンとうさぎ付きのマフラーを、いつかにプレゼントする。
いつかもそれに満足したのか、礼を見つめてニコリと笑う。
そして、ふたりは嬉しそうに手を繋ぎ、仲良く雑貨屋を出て行った。
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