●みんなに幸あれ素敵な聖夜
粉雪舞い散る街角で、子ども達にプレゼントを配る、ちょっと愉快なサンタが2人。
「は~い、良い子のみんな、一列に並んで下さいませ~」
「子供達よ~! サンタさんのプレゼントだぜー!」
ちょっぴりセクシーなサンタガールに扮した燐音と、素肌に直接衣装を羽織ったカイト。彼らは、ワイワイと嬉しそうに集まってくる子ども達に、順番にプレゼントを手渡していた。
だが、集まってくる子どもの数は、どんどんどんどん増えてくる。
「……か、数が多すぎますわね」
「ぅおっ……ほら、ちゃんと並べって……!」
けれどサンタとプレゼントを目の前にした子ども達に、そんなことを言っても聞くはずなどない。
「こうなったら……!」
燐音は、やおらソリの縁に立ち上がると、袋から取り出したプレゼントを、子ども達に向けて思いっきりバラ撒きはじめた。
「うお? リンネ! そんなところで仁王立ちしてるとこけるぞ?! っていうか子供おびえてるっ?!」
あまりの自体に驚いたカイトは、目を白黒させながら、燐音と子ども達を交互に見た。
「わーい! プレゼントだー♪」
だがプレゼントの威力と言うべきか、流石の順応力と言うべきか、はじめのうちはちょっと怯え気味だった子ども達は、あっと言う間に笑顔を取り戻すと、プレゼントの雨の争奪戦を楽しみだした。
「おねーさんこっちこっちー!」
「そっちばっかりずるーい!」
「さぁ、子供達よ! おねーさんが纏めてプレゼントを差し上げますわよ、おーっほっほ!!」
あちらへばらり、こちらへばらり。
気が付けば、ソリ一杯に積まれていたプレゼントは、もうほんの僅かになっていた。
「ほ~ら、取れなかった奴はこっちに来ーい!」
それをカイトが、プレゼントを取り損なった子達に配り、賑やかすぎるサンタのバイトは無事終了!
そしてここからは、互いが互いのためのサンタクロース。
「はいよ、頑張ったサンタさんにプレゼント」
大したモンじゃないけれどと言いながら、カイトが燐音に手渡したのは、『YellowtailButterfly』と名付けられた、蝶のチャームのついた銀細工の髪飾り。
「わぁ! ありがとうございます♪ じゃ……わたくしも!」
美しい髪飾りに満面の笑みを浮かべながら、燐音も隠し持っていたお返しのプレゼントを取り出す。
「あっ、ありがとう……。開けてみてもいいか?」
カイトはちょっと照れ臭そうに、差し出された包みを解いた。
そこに入っていたものは、七転八倒……ではなく、七転び八起カイトくん人形。
危険な戦場で倒れても、必ず立ち上がって帰ってこられますようにとの、燐音の願いが込められている。
「「ありがとう……」」
どちらともなく、再度そう言い微笑み合う。
メリークリスマス!
素敵なサンタと、すべての人々に、幸あれ!
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