星野・優輝 & 白嶺・踊子

●〜シルバーリングに想いを込めて〜

 クリスマスパーティの舞踏会で一緒に楽しく踊った後、ふたりはパーティを抜け出して優輝の経営する喫茶店に立ち寄った。
 優輝の経営する喫茶店はレトロな雰囲気が漂っており、窓にはクリスマスらしいイルミネーションが飾り付けられている。
「ロマンチックで素敵な舞踏会だったなぁ……」
 幸せそうな表情を浮かべ、踊子がカウンターに腰掛けた。
 こんな素敵な夜に、愛する人とふたりきり。
 ここで甘い告白をされたら、絶対にOKしてしまいそうな雰囲気。
「ああ、楽しい一時だったな」
 先程の出来事を思い出しながら、優輝がさらりと答えを返す。
 優輝はかなり緊張していた。
 あえて表情には出さず、普段のように振舞っていたが……。
(「……今日、告白するんだ」)
 心の声が優輝を急かす。
(「分かっている。分かっているのだが……」)
 ……なかなかキッカケが掴めない。
「コーヒーでいいか?」
 何とか自分を落ち着かせ、優輝がコーヒーポットを手に取った。
 ……焦る事はない。
 自分自身に言い聞かせ、ゆっくりと深呼吸……。
「うん、クリスマスらしいスペシャルで」
 優輝が作るコーヒーを眺め、踊子が楽しそうな表情を浮かべる。
「それなら、ちょうどいいのがある」
 そう言って優輝が出したコーヒーのソーサーに乗っていたのは、シルバーのリング。
「こ、これは……」
 踊子がハッとした表情を浮かべて、優輝と目を合わせた。
「踊子のこと、意識するようになってた。自分の気持ちに正直になろうと思うんだ。……踊子、俺でよければ付き合ってくれないか? こんな俺でよければだけど」
 恥ずかしそうに頬を掻きながら、優輝が照れた様子で告白をする。
「もう……、指輪で告白なんて、結婚のプロポーズみたいですよ? ……でも、とっても嬉しいです☆」
 踊子は驚いて両手を口元に当て、顔を真っ赤にしながら、そっとリングを指にはめ、くすっと優輝に微笑み返した。




イラストレーター名:あず