●ツリーの傍で起きろと叫ぶ
「えーっと……、こんな感じかな」
結社内で行うクリスマスパーティの食材を買い出しに行くため、晴臣が大きなクリスマスツリーの傍らで遥日に送るメールを打っていた。
『早く着きすぎた。ヒマ』
何とも漢らしい一文。
飾らないところが、最大のポイント。
……というか、眠い。
「それじゃ、送信……。これで良し」
すべてをやり終えたような表情を浮かべ、晴臣が次第にウトウトとし始める。
次から次へと現れる睡魔の猛攻を受け、次第に眠りの世界へと旅立つ、晴臣。
まるで晴臣にの引導を渡すようにして、ポツポツと雪が降ってきた。
それから、しばらくして……。
遥日が待ち合わせ場所に到着した。
一応、遠くから『臣くーん』と手を振ってみたが……、反応なし。
心配になって近寄ってみたところ、晴臣が……眠っていた。
しかも、薄っすらと雪が積もっており、沢山の天使達に導かれアッチの世界に旅立つ途中。
「臣君!? ちょっ、何で寝ているの!? しかも雪積もっているし!」
さすがにこれは一大事かと思い、遥日が晴臣の胸倉を掴んでガクガクと揺らす。
その勢いでさすがの晴臣も目を覚まし、何事かと思ってゴシゴシと目を擦る。
「あー……、遥日? 遅い、眠い、寒い。……何で俺に雪積もってんだ?」
未だに状況を飲み込む事が出来ず、晴臣が眠そうにあくびをして体を伸ばす。
その姿を見て遥日は何も答えず、晴臣に生暖かい視線を送るのだった。
そして、買い物が終わり……。
明らかに結社員の人数よりも多い食材を持った二人は、バス停でバスが来るのを待っていた。
「ね、臣君。俺、臣君には感謝してるんだよ。銀誓館に来て初めて出来た友達で……、そこから友達も増えて……」
何かおかしい。
……反応がない。
そう思って横を向いた瞬間、晴臣が再び眠りの世界へと旅立っていた。
「……って、また寝てるし!? ダメ、臣君! こんな寒いところで寝たら死ぬよ!?」
そのため、遥日が先ほどよりも乱暴に晴臣の胸倉を掴み、激しく揺さぶって何とか起こそうとする。
その間も晴臣は夢の中で天使達と戯れ、幸せそうな笑みを浮かべるのであった。
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