嘯・あい & 連・邦彦

●ゴーストクッキング−残留思念蔓延る料理?!

 クリスマスといえば、やはり美味しい料理はつきもの!
 そんなわけで、邦彦とあいは和気藹々と料理をはじめた。
 2人とも、料理の腕には自信アリ。
 そうなれば、やはり出来上がるのは華やかで美味しいクリスマスの料理。

 ………そんなわけがない!

 確かに2人とも、腕はいい。
 だが、邦彦とあいなのだ。
 まずそこが問題なのだ!
「だって、見た目も味も良い料理なんて、ありふれていてつまらないじゃないですか」
 それはあいの弁。
 彼女の目指すもの、それは「見た目最低味最高」な料理。
 まともな食材もそうでないものも、容赦なくガンガン調理する。
 フライパンの上で煙を上げているブツは、他の能力者達がが見たら不定形のゴーストか何かと間違えてしまいそうなほどに、グロテスクな色と形に変化していた。
 目を閉じて匂いだけを嗅いでいれば、まるで一流シェフの料理だというのに。

 一方、邦彦の混ぜるボールの中身も、何やら不吉な変化を見せていた。
 彼は「料理は科学」をモットーにしているらしく、日夜様々な調理法を研究し、最近では調味料の自作にまで手を出し始めたそうな。
 だが問題は、それがどう見ても調味料とは程遠いということだろうか。
 原材料は正体不明、色は凄まじく毒々しい。おそらく、自作の毒と言われた方が、納得がいくかもしれない。
 そんなものを大量投入した料理が、はたしてまともな仕上がりとなるのだろうか。

「連先輩、順調ですか?」
「モーッチロン! 自分に不可能はないッスよ!」
 淡々とした口調で経過を尋ねてくるあいに、ビッと左手の親指を立て、ハイテンションに応じる邦彦。あいもつられて、右親指をぴっと立てる。
 ギョッギョッギョッギョッギョッ。
 ウボァ〜〜〜ッ。
 混ぜて、炒めているだけなのに、音は何故か断末魔。
 ある意味、天才的。
 こんなもの、本当に食べて大丈夫なのか!?
 実は残留思念なんじゃないのか!?

 そんな、一見とんでもない調理風景も、本人達は至って真面目。
 たしかに見た目はひどいかもしれない。
 けれどきっと、味は最高に違いない。
 なにせ、2人とも料理上手だ。
「ゴーストも入れちゃいましょうか。嘘だけど」
「それ最高ッスよ嘯くん!」
 彼らの恐怖のクッキングは、まだまだ終わりそうにない。




イラストレーター名:一二戻