●大切なひと。――其れは甘い甘い、悠久のプレゼント。
綺麗に飾り付けられた、ふたつのクリスマスツリー。
ちょっと大変だったけれど、納得のいく出来映えに、羽音は満足感に浸っていた。
これを窓辺に飾り付ければ、今夜の準備はすべて完了。あとは恋人の空が来るのを待つだけ。
(「……そういえば、恋人になってからこれが2回目のクリスマスだっけ」)
まだ片想いだった頃、一体何度彼女に告白しただろう?
そして何度フラれただろう?
指折り数え、憶えているだけでも5回……まるでストーカーだなと、ちょっと自嘲気味に笑いながら、彼はツリーを大事そうに抱え、ひとつずつ窓辺へ運んでいった。
───その頃彼の家の前では、可愛いサンタが最後の服装チェックに勤しんでいた。
(「今年もはおちゃんには一杯一杯迷惑かけちゃったけど、その分たっくさん愛情たっぷりだったかな♪」)
ワクワクしながら髪を整え、胸元のリボンを結び直す。
「そういえばツリーちゃんと飾ってくれたかなあ? たーっのしみだなぁ♪」
高鳴る鼓動を抑えつつ、深呼吸して窓辺を見れば、そこには綺麗に飾られたツリーがふたつ、仲良く並んで煌めいていた。
「……よしっ、出陣!」
空は心を決めると、ドアノブを強く握りしめた。
「空さんまだかな……?」
なかなか来ない恋人を、窓辺で頬杖をついて待つ羽音。
プレゼント交換と言っていたけど、一体何を………。
……と、ぼんやり考え込んでいたその時、突然背後で、ドアの開け放たれる音がした。
「空をはおちゃんにぷれぜんと・ふぉー・ゆー♪」
「ぎゃ!? 空さっ!?」
部屋に飛び込むや否や、その場でクルリと1回転し、羽音の頬に口付けを落とす空。
「え? ふぉーゆー…って僕!?」
あまりに突然すぎる出来事に、振り返ったままの体勢で固まってしまう羽音。そんな彼に、空は最高の笑顔を向けた。
「うん! これから空ははおちゃんのものー♪」
「あ…ありがとう空ぁ♪」
驚きと感動に潤む瞳で、羽音は空を見つめ返した。そして、その左手の薬指に、そっとお返しのプレゼントを……。
「ほわっ……! ありがーとうなんだっよよー♪」
きらめくリングに、空が幸せと優しさに満ちた笑みを浮かべる。
「来年もずっとだよ? 空」
「にゅっは! 来年も再来年もずっとずぅーっと一緒だよよーん!」
そっと抱きしめて囁けば、返されるのはずっとずっとの愛の言葉と、背中に回される華奢な両腕。
ずっと、ずーっと。
いついつまでも、共に過ごせますように………。
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