十六夜・瞳 & 灰羽・天詩

●−貴皇主と従姫、誰知れず密なる契約の聖夜−

 純白の雪降る逆三日月の聖夜。
 クリスマスパーティの飾りが残った屋上で、瞳が天詩と寄り添うようにして立っていた。
「今宵は楽しめたかい?」
 屋上から見える景色を眺め、瞳がゆっくりと口を開く。
 街中のイルミネーションが宝石の如くキラキラと輝いており、それが瞳達の心を和ませている。
「うん、すっごい楽しかったぞ♪」
 クリスマスパーティの余韻が残って、うきうきとした気分のまま、天詩が笑顔を浮かべて答えを返して暫し、今日の喜びを語り合う。
「うた……。ちょっと、指を出して?」
 伏せ目がちに視線を送りつつ、瞳が揃いで買ったティアラ型ピンキーリングを取り出し、少し緊張した面持ちで、天詩の細く小さな小指にゆっくりと嵌めていく。
 天詩は、はにかんだ微笑みを浮かべ、指輪を嵌める瞳が格好いいと思い、ぼんやりと惚けた。
「それじゃ、今度はこっちの番だね」
 クラウン型のピンキーリングを手に取り、天詩が少し緊張した様子で、彼女の指にそっと嵌める。
「ほら、出来たよ」  満面の笑みを浮かべ、天詩が瞳に微笑みかけた。
「……是で、私達は『特別』だよ」
 彼女を見つめ返して優しく微笑み、瞳があまりの嬉しさに堪らず天詩を抱き寄せる。
 その途端に天詩が『わっ!』と驚いた様子で声を上げ、瞬時に真っ白な頬が赤く染まっていく。
 彼女の鼓動が肌を通じて、トクトクと聞こえてくる。
「もう、君を手放さないと誓おう」
 自分の腕の中にいる天詩にそっと触れ、瞳が真っ直ぐ彼女を見据え、優しく誓いの口付けを落とす。
 至近距離で響いた瞳の言葉……。
 その言葉が天詩の中でゆっくりと広がっていく。
「ずっとずっと……ずーっと、一緒だよ……あきら」
 その言葉を聞いて、天詩がすうっと目を細め、夢心地でそう呟いて目を閉じる。
 そして、瞳は指環を嵌めた左手を指を絡ませ、彼女と手を繋ぐのであった。




イラストレーター名:GEN