麻々原・五紀 & 日和瀬・悠

●つながる、想い。

 いつからだろう、互いの気持ちが特別なものになったのは。
 秋の終わりに受け取った、悠からの告白。
 自分に自信の無い五紀は、即答できずに告白の返事を保留にしてしまっていた。
 長い時間をかけて、みつけたもの。
 長い時間、待たせてしまった想い。
 だからこそ、この特別な日に、あの日の答えを……。

 輝くツリーの前で、二人は待ち合わせをしていた。
 互いに姿を見つけ、駆け寄る二人。
「メリークリスマス、悠。ごめんね、パーティー出られなくて……」
 そんな五紀の言葉に悠は首を横に振る。
「いいよ。イブにお兄……い、五紀さんと、会えただけで充分だもん……。メリークリスマス……五紀さん」
 悠はそういって、僅かに微笑んだ。
 その健気な言葉に五紀は、困ったような顔で苦笑を浮かべる。
 忙しくて断ってしまったパーティー。少なからずとも、不満を抱いているはず。そう、五紀は感じていた。
 頼りは、この手の中にあるプレゼントと……。

 五紀は、そっと小さなプレゼントを差し出した。
 思いがけないプレゼントに、悠はぱっと顔を輝かせ、その手を伸ばす。
「待たせて、ごめんね」
 その五紀の言葉に、悠ははっとした。
 待たせるという言葉に、思い当たるのは、たった一つ。
「君のことが、好きです。世界で一番」
 ようやく聞けた、その言葉。
 それに待たされた不満や不安だった気持ち、たとえようもない嬉しさが胸いっぱいにあふれて。
「…………」
 視線もあげられないまま、今すぐ泣き出しそうな表情で、悠はプレゼントを見つめ続ける。
 五紀はただ、静かに優しい瞳で、彼女の声を待っていた。

「……遅いよ」
 やっと出せたのは、その言葉。

 顔をあげたときには、きっと笑ってくれるから。
 だから、自分も笑顔で応えよう。
 君に笑顔を見せていたいから。
「うん、ごめんね」
 彼女に謝る言葉も笑顔で……。




イラストレーター名:ナコタ