砂月・ココナ & 夜神・狗琅

●*。゜☆White Christmas☆゜。*

「甘い……な」
 ケーキフォークで切り取られた柔らかなスポンジケーキは、ふんわりとした食感を狗琅の舌に残しとけるように消えていった。生クリームとイチゴに飾られ端の欠けたケーキはココナが手作りしたものだ。白くコーティングされたクリスマスケーキの生クリームは、何処か雪を思わせる。もちろん、本物の雪とは違い暖房の効いた暖かな室内でも溶けては居なかったが。
「私の自信作なんよ〜♪」
 幸せそうに自作のケーキを味わいつつ、ココナは言う。フォークに削られ、皿に載ったケーキはどんどんと小さくなって行く。ケーキの白も雪を思わせたが、ココナの髪に付けたぼんぼりも白くフワフワとしていて、雪を連想させる。
「あっ」
 髪の動きに合わせてユラユラ揺れていたぼんぼりがふいに大きく揺れたのはケーキを食べていた動作からは不自然だったが、何故そんな動作になったのか狗琅にはわからない。
「雪……」
 直後にココナが上げた声が疑問を解決へと導くが、ココナの向けた視線を追えば考えるまでも無く理解できたかも知れなかった。温度差でうっすらと曇った窓の外、本物の雪がゆらゆらと天から舞い降りていたのだから。
「狗琅ちゃんっ外! 雪なんよ〜っ」
「ん……ココナ、ちょっと待って……くれ」
 考えてと言うより思わずと言った調子でココナが手をつかみ、手を引かれる形になった狗琅は微かに頬を染めながら窓際へと向かう。戸惑わなかったと言えば嘘になるが、たまにはこういうのも良いかもしれない。
「こういうんホワイトクリスマス言うんやね♪ すごい綺麗なんっ」
 文字を模ったシールがはり付く窓の向こう、いつの間にか雪景色になっていた外から狗琅の方へと振り返り、ココナは上機嫌で微笑みかける。ただの偶然かそれとも天の贈り物か。舞い降りる雪が止む気配は今のところ無い。
「ああ、綺麗……だな」
 ココナの言葉に頷き、狗琅は言葉を続ける。
「このまま降って、明日積もってたら雪で遊べる……な」
「うん」
 ボソリと呟くように言った言葉は別に予言という訳ではない、ただ、願望と仮定しての事実を口にしただけだったが。頷いたココナの声はとても嬉しそうで、自身の呟きがこのまま事実になるような気が少しだけした。
「狗琅ちゃんは積もったら何するん?」
「ん……そうだな」
 部屋の光と共に二人の声が窓から零れる。雪は光に照らされ煌めきながらゆっくりと舞い降りてゆく、白い大地へと。狗琅とココナは暫くの間窓の外を見ていた。手を繋いだままで。




イラストレーター名:二階堂エビス