鋼・海藍 & 翔・星華

●A surpris Christmas present

「……」
 どこに行くのか行き先も告げず、星華を連れ出す海藍。
 星華も彼からどこに行くのか、まったく何も告げられていないため、少し戸惑った表情を浮かべている。
「あ、あの……これからどこに行くんですか?」
 星華の言葉に海藍は何も答えない。
 とても、言いづらい事なのか。
 それとも、何か気まずい事なのか……。
 海藍の表情から読み取る事が出来ない。
(「でも、相手が海藍さんなら、大丈夫……」)
 自分の不安を打ち消すようにして、星華が静かに首を横に振る。
 確かに何も言われず、何処かに連れて行かれるのは、とても不安な事だが、海藍に限っておかしな場所に連れて行く事はない。
 それでも、まったく不安が無いといったら嘘になる。
(「海藍さん、一体どこに……」)
 詳しい行き先も聞けぬまま、海藍の背中を眺めながら、星華がテクテクと後をついていく。
「……ここだ」
 着いた場所はイルミネーションの綺麗な公園。
 公園の中心には大きなクリスマスツリー。
 宝石の如く美しく輝くイルミネーション。
「こ、この場所に連れて行きたかったんですね」
 ……一瞬にしてクリスマスツリーの虜になった。
 いまになって海藍が黙っていた理由がよく分かる。
 これならば、公園に着くまで、どこに行くのか、言う事が出来ない。
「ああ……」
 彼女が喜ぶ姿を見て、海藍も自然と笑みが零れた。
 詳しく行き先を告げずにここまで来てしまったため、彼女を不安にさせてしまったかも知れないが、ここまで喜んでくれるのなら、心配する必要がなさそうだ。
 そんな中、クリスマスツリーは、ふたりを見守るようにして、暖かい光を放っている。
「せっかくだから一緒に歩きませんか?」
 恥ずかしそうに頬を染め、星華がゆっくりと右手を伸ばす。
 海藍は彼女の右手をそっと握り返すと、結果的にサプライズなプレゼントになった公園の散歩するのであった。




イラストレーター名:なたろ