●高校最後のクリスマスだから
お互いにとって、高校最後のクリスマス。
ふたりはそれぞれ別の相手と、クリスマスパーティを楽しんだ。
それから、日もすっかり暮れ、イルミネーションが輝き出した頃。
広樹は力の携帯に、一通のメールを送信した。
彼女に『会いたい』と気持ちを伝え……。
待ち合わせ場所は、広樹の教室である3−1。
しばらくして……。
3−1の教室に、力がやってきた。
ふたりきりの暗い教室。
校庭に飾られた巨大ツリーの明かりが、柔らかく教室に差し込んでいる。
それから、ふたりはプレゼントを交換したり、一緒にお菓子を食べたりしていたが、次第に話題は卒業後の進路をどうするか、という話になった。
「オレ、この学園を卒業したら、実家に帰ってゲームクリエイターを目指そうと思うんだ。そしたら攫いに行くから♪」
自分の夢を語りながら、広樹が力に視線を送る。
それは広樹にとっての夢……。
いまは未来の自分を思い描く事しか出来ないが、必ず実現させる事が出来ると思っている。
「攫いにって……。ふふ、それは楽しみですね」
照れ隠しをするように広樹を茶化し、力が微笑みを浮かべて答えを返す。
「……オレ本気なんだけど」
むっとした表情を浮かべ、広樹が力を抱き寄せる。
その途端に力の猫耳がぴんと立ちそうなくらい驚いた。
「高校最後の思い出作りとか、してみる?」
彼女の耳元で囁きながら、広樹が含みのある笑みを浮かべる。
何も答える事なく、広樹を見つめる力。
広樹は、その唇にそっと自分の唇を重ね合わせ、一度離れてから濃厚な口付けを交わす。
彼女に恋人らしい相手がいる事は知っていたが、自分の想いを抑える事が出来なかった。
そして、高校最後の思い出として、したつもりでいたキスが、何度も繰り返されていく。
「来年もこうやって一緒に過ごせたらいいな」
勢いよく力を抱き寄せ、広樹が優しく頭を撫でる。
そのため、力が広樹を黙って見つめ、小さくコクンと頷いた。
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