一色・永遠 & 灰崎・慈音

●燭

 廃墟と化した教会の中。
 ふたりは雪の降る外を眺め、静かにクリスマスの夜を過ごしていた。
「寒ぅないん?」
 蝋燭に火を灯しながら、慈音が永遠に声をかけ、そっと手を重ねる。
「あ……」
 その瞬間、永遠が思わず声を漏らし、恥ずかしそうに赤面しながら、問われた言葉に静かに『平気だ』と頷いた。
「ぶは、冷っ!」
 重ねた手を強く握り握り、慈音が驚いた様子で声を上げる。
「……のぉ知っとる? 手の冷たい人って心の暖かい人間なんじゃと」
 だが、すぐに冷静になり、慈音がボソリと呟いた。
「……優しいだなんて……そんな……」
 照れた表情を浮かべながら、永遠が否定しようとして口を開いたが、慈音の視線に気づいて、変に意識をしてしまい、途中で言葉を止めて見つめ返す。
「にしし……、永遠先輩のあったかハート奪い中じゃー」
 永遠の瞳をじっと見つめ、慈音がニィッと笑う。
「……慈音様……。もう……とっくに……私めの心は……慈音様に……奪われて……おります故」
 いまにも消え去りそうな声を上げ、永遠が恥かしそうに答えを返す。
「来年のクリスマスも、その後もずっと、一緒におって下さい。永遠先輩がおらんとワシ、心が寒過ぎて凍死してしまうわ」
 慈音の口から、本当の気持ちが漏れる。
 嘘偽りの無い心の声が……。
 その言葉と共に慈音が手を引き、ゆっくりと顔を近づけて、そっと口付けをかわす。
「…私めの方こそ……お傍に置いて下さいませ……。慈音様が居ないと……私めも凍えて……しまいます」
 そっと優しく口付けをされて一瞬驚いた表情を浮かべ、永遠が赤面して硬直した状態から、少しずつ緊張が解けていった。
「……恥ずかしゅう……御座いますが……幸せで……御座います」
 照れた様子で口を開き、永遠が幸せそうに微笑み、寄り添っていく。
「……こっ恥ずかしいのぉ……嫌でも熱くなるっちゅーモンじゃ」
 そのため、慈音は照れ隠しに空を仰ぎ、真っ白な息を吐き出した。




イラストレーター名:中星中