影崎・銀月 & 湖夜・雪星

●初デートはホワイトクリスマス

 ふたりが付き合い始めたのは、12月になってから。
 けれど色々忙しくって、なかなかデートができずにいた。

 そして、やっと迎えることのできた初デートの日は、ホワイトクリスマスとなった。
 面白いタイミングだなと思いつつ、銀月は雪星をイタリアンレストランへといざなった。

 今まで和一辺倒の生活だったため、メニューを見ても今ひとつピンとこないが、コースという強い味方があるから大丈夫。
 談笑しながら暫し待てば、ピザやパスタ、原色に彩られたサラダの皿が、次から次へと運ばれてくる。
「乾杯だな、雪星」
「か、乾杯ですっ……」
 ふたつのグラスをワインに見たてたジュースで満たし、軽く縁を触れ合わせる。
 キンッ、と響く澄んだ音は、これから始まる素敵な時間の幕開けを告げているかのよう。

 素敵なディナーをゆっくり堪能した後は、小雪舞い散る街でショッピング。
「あ、あの、お揃いのアクセサリー、買いませんかっ?」
 雪星の提案で、まずはアクセサリーショップへと向かったが、こういう場所が不慣れな銀月は、店内を当て所無く歩き回っては、少し居心地が悪そうに視線を方々へ彷徨わせている。
 しかし、すっかりショッピングに夢中な雪星は、そんな彼の様子にはまったく気付かず、先程から真剣にアクセサリーを見繕っていた。
「あっ……」
「ん、どうかしたか?」
「こ、こんなの、どうでしょうかっ……」
 雪星の示した先にあったものは、月と星、ペアのペンダントトップだった。
「ふ、良いんじゃ、ないか?」
 互いの名を冠したデザインに、なかなかとんちが効いているなと、フッと笑みを浮かべる銀月。
 そしてふたりは、早速揃いのペンダントトップを身につけ、夜景の見える公園へ向けて歩き出した。

 手を繋ぎ、並んで歩く夜の公園。
 美しい夜景を楽しみながら、ゆっくりと歩を進めていると、いつしか雪はやんでいて、かわりに柔らかな月明かりが降り注いでいた。
 ……ふと、雪星が噴水の前で立ち止まり、何か言いたげに繋いでいた手に力を込めた。
 それに気が付き、銀月もその場で歩を止める。
「……あ、あの、銀月さんっ」
「ん、なんだ?」
 微かに震える、消えいりそうな雪星の声。
 緩やかに閉ざされてゆく両瞼。
 何を意味しているのかが、分からないわけなど無い。

 月明かりに照らされて、ペンダントトップがキラリと光り、ふたつの影がひとつに重なる。
 ここから、ふたりの新たな思い出作りが始まる……。




イラストレーター名:くらりん