●。.*:.Imitation lover.:*.。
日本においては、クリスマスというのはパーティーをして、ご馳走やケーキを食べて、子供達はプレゼントをもらって、恋人たちは2人きりでロマンチックに過ごす……主にそういう日だ。
では、もうプレゼントをもらう子供という年齢でもなく、かといって恋人がいるわけでもない若人は、一体どう過ごせば良いのか。
今年、ヒャーリスと篠が出した答えは。
ひとりで過ごすのは寂しいので、とりあえず一緒に過ごしてみる、というものだった。
手を繋いで夜の街に出た2人は、イルミネーションのきらめく中を歩き、いつしかクリスマスツリーの前に来ていた。
深い緑のモミの木の枝に飾りつけられた金と銀のオーナメントが、街の明りを反射してきらきらと光っている。
今夜のために準備されたツリー。
何気なく足を止め、それを眺めていたヒャーリスと篠だったが、ふと気がつくと周囲にいるのはカップルばかりだ。
皆一様に幸せそうに、身を寄せ合っている。囁き合っているのは、もちろん愛の言葉なのだろう。
居心地の悪さに、なんとなく、ヒャーリスと篠は目をあわせた。信頼しあっているとはいえ、恋人同士ではなく友人同士の2人。お互い、耳元に囁き合うような甘い言葉など持ち合わせていない。
「俺達、場違いかな?」
と、篠が笑った。
「こうしていると私達も恋人同士に見えるのでしょうか」
ヒャーリスが微笑する。
年齢の近い少年と少女。目の前のツリーに飾られているオーナメントと同じ色取りの、対になる銀の髪と金の髪。それはもう、第三者が見れば間違いなく、お似合いのカップル。
「俺なんかとそう見られると困るでしょ?」
篠が笑うと、それを見てヒャーリスもまた笑った。ただし彼女は、くすっと悪戯っぽく。
「特別困りはしませんけれど」
するり、とヒャーリスの手が篠の腕に触れる。
腕を組まれて、一瞬、篠は目を見開いた。
そう見られると困るでしょ?
さっきの台詞はヒャーリスを照れさせてやろうと思って言ったのに、こう来るとは意外だった。
逆に照れさせられて、篠の頬に朱が差す。
組んだ腕にぴたりと身を寄せながら、ヒャーリスはくすくすと笑っていた。
普段は外に出さない、彼女の意外な一面を見せられたのは、やはり今夜が特別な、聖なる夜だからだろうか。
ツリーの枝で鏡のように輝く銀色のオーナメントたちを見てみれば、いつもよりも距離の近い2人の姿が、街のイルミネーションと共に映し出されていた――。
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