ナラカ・ノワール & 朝生・ひむか

●Christmas in the snow

「ねぇ、見て……、雪!! 何だか、綺麗だね」
 ポツポツと雪が降ってきた事に気づき、ひむかが窓から身を乗り出すようにして、嬉しそうに夜空を眺める。
 空からは小粒の雪が降っており、窓の縁に当たるたび、あっという間に溶けていく。
「……そうか? 余計に寒くなっただけと思うけど……」
 後ろから彼女に圧し掛かるようにして、ナラカが素っ気なく答えを返す。
 ナラカからしてみれば、雪が降っても寒いだけ。
 ……特に感動するような事も無い。
「もうっ! クリスマスなんだから、もっとムードを出してよね」
 よく分からないような言い訳で、ひむかが大きく頬を膨らませる。
(「……本当に鈍感なんだから!」)
 ひむかは思った。
 普通ならば、『クリスマス』と言う言葉を出しただけで、何となく気づくはずである。
 わざと気づいていないフリをしているのか、本当は気づいているのか、ひむかにはよく分からなかったが、どちらにしても、もどかしい」
「ムードも何も……、こんなの寒いだけだろ」
 真っ白な息を吐きながら、ナラカが納得の行かない様子で反論をする。
 この様子ではきっと後者なのだろう。
 ……ナラカはまったく気づいていない。
「だ・か・ら〜、もう少し気の利いた事が言えないの〜」
 腰に手を当て、ひむかが怒る。
「気の利いた事だと言われてもなぁ……。雪が……、綺麗……って、こんな感じか?」
 ナラカも困った様子で汗を流す。
「もっと、感情を込めて! 例えば、こんな風に……」
 そう言って、ひむかが身体をよじり、ナラカの頬にちゅっとキスをする。
「……!」
 一瞬、何が起きたのか、理解する事が出来ず、ナラカが唖然とした表情を浮かべた。
 ひむかは照れているのか、むくれているのか、分からないような表情を浮かべ、ナラカに視線を送っている。
「えっ? えっと……、クリスマスだから」
 そのため、ひむかが顔を真っ赤にして、何やらごにょごにょと言い訳をするのであった。




イラストレーター名:Rikka