天照・鋼牙 & 比良坂・史恵

●サプライズな聖夜

 クリスマスの日、史恵は家で楽しそうに髪飾りを選んでいた。今日の髪型には大きな花飾りが似合うだろうか、それともシンプルにリボンにするべきか……どれが一番喜んでくれるだろうかと悩む史恵の電話が、軽やかに着信を告げる。

「すまぬすまぬ、着替えに手間取っての〜……おや、その格好は?」
「おっす、やっと来たか」
 史恵を呼び出したのは鋼牙だった。同じダンスパーティーに二人で行く約束をしていたから、本当はタキシードを着て来るはずなのに、何故か鋼牙が着ているのはサンタクロースの衣装。
「へへ、任侠サンタの登場だ」
「おやおやすっかりサンタさんじゃな。体格といい、おヒゲといい、よぅ似合っておるわ」
 おどけたように言う鋼牙を見上げ、史恵はニッコリと微笑む。
「一体何の用じゃ? それと随分待っていたのじゃな、鼻が赤くなっておる。大丈夫かえ?」
 少し心配そうに見上げる恋人の気遣いが嬉しくて、寒さなんていっぺんに吹き飛んだ。照れくさそうに鋼牙は笑うと、小さな箱を懐から取り出す。
「そんなに待ってねぇよ。それよりいきなり呼び出しちまってわりぃな。どうしても、これを渡したくてよ」
 渡された小箱を開けた史恵は、中身を見て目を輝かせた。箱の中には、雪の結晶をモチーフにしたイヤリングが入っていた。周囲の灯りを反射して、イヤリングは青色に輝く。
「おぉっ! こ、これを妾に? 何と綺麗な輝きじゃろうか……!」
 早速史恵はつけてみせる。史恵の黒い髪と赤いドレスに、その輝きはよく映える。
「どうじゃ? 似合うかの?」
「ああ……まぁ、たまにはこういった洒落た演出でもしねぇとな」
 ちょっと悪戯っぽくにやりと笑うと、鋼牙は思い出したように。
「あ、そうだ。史恵……Merry Xmas」
 そう告げて、鋼牙は寮に向かって歩き出す。
「………Ich liebe dich」
 それを追いかける史恵を振り返り、小さくぶっきらぼうに囁く鋼牙。なにを言ったのか、分からずに首を傾げる史恵だが、すぐまた鋼牙が歩き出すのを見て、慌てて彼の腕を掴む。 「素敵な聖夜をありがとう、妾のサンタさん! メリークリスマス、じゃ!」
 花のような笑顔を浮かべながら、史恵は鋼牙の腕に自分の腕を絡ませる。ふと、寄り添って歩く恋人を鋼牙がお姫様抱っこすると、驚きつつも、でも嬉しそうに、史恵は頬を赤くした。




イラストレーター名:たぢまよしかづ