西園寺・百合子 & リヴァル・ローレンス

●ダンスパーティ。数ある中の、一つの輪

「百合子と、戦場以外で楽しむのも、久しぶりね」
 華麗にステップを踏みながら、リヴァルが青色のドレス姿でクスリと笑う。
 クスリマスのダンスフロア。
 一緒にダンスを踊っている百合子も、彼女の動きに合わせて、丁寧にステップを踏んでいる。
 ふたりは今この時を楽しんでいた。
 まるでこの時間が過ぎてしまう事を惜しんでいるかのように……。
「確かに……、久しぶりですね」
 彼女とダンスを踊りながら、百合子が記憶の糸を辿っていく。
 確かにそう言われてみれば、随分と久しぶりかも知れない。
 それだけふたりとも忙しくて時間が取れず、ダンスを踊っている暇が無かったのかも知れないが、自分達が思っていたよりも、時間が経っていたようである。
 だからと言って、お互いの身体が鈍っていると言うわけではなく、いままでダンスを踊る事が出来なかった思いを発散するようにして、キレのある動きでステップを踏み続けた。
「……さすがね」
 彼女の動きと曲に合わせ、リヴァルが優雅にダンスを踊る。
 お互いの飛び散る汗が、宝石の如くキラリと輝く。
 いまだけは自分達のためだけに、時間が流れているかのように錯覚してしまうほど、充実した時間が流れていた。
「優雅に……とは、なかなか参りませんけれど。貴女をリードできる所くらい、見せておかなければ。格好がつきませんでしょう?」
 ゆっくりとリヴァルの手を取り、百合子が習い事と音楽の才能を活かし、流れるミュージックに合わせてダンスを踊る。
 好きな人と身体を触れ合う気恥ずかしさと、好意による胸の高鳴りを隠しつつ……。
 百合子は格好をつけるようにして、美しく華麗なステップを踏んでいた。
「来年の保証は出来ないけれど。だからこそ、今を。存分に楽しみましょう」
 彼女に語りかけながら、リヴァルがさらに激しいステップを重ねていく。
 そして、ふたりは我を忘れて夜更けまで、踊り明かすのであった。




イラストレーター名:大雪基地