●Happiness
「ねぇ、見て、見て! ツリーだよ! 綺麗〜♪」
はじめと一緒に遊園地の観覧車に乗り込み、クリスが瞳をランランと輝かせた。
観覧車から見える夜景はとても美しく、宝石の如くキラキラと輝いている。
こうして夜景を見ているだけで、クリスの胸はドキドキと高鳴り、ついつい我を忘れてはしゃいでしまう。
その事があまり良くない事だと分かっていても、自分の感情を抑える事が出来なかった。
「落ち着き無く楽しんでいるのは分かるけど、もう少し落ち着こうよ」
苦笑いを浮かべながら、はじめが彼女に視線を送る。
よくよく考えみれば、こうして誰かと過ごすクリスマスは初めてだった。
(「いろいろあったなー」)
しみじみとした表情を浮かべ、はじめが今までの出来事を思い出す。
彼女と付き合い始めてから、引っ張り回されて掻き回され、気がつけばこんな事になっていた。
だからと言って、その事が嫌だと思った事はなく、むしろ心地良いとさえ思っている。
「だって、楽しいんだもん」
自分でも自覚があるのか、まったく悪びれた様子もなく、クリスが笑顔を浮かべて答えを返す。
何とか落ち着こうと思っても、自分の感情に嘘はつけない。
そこまでして気持ちを落ち着かせる事が出来たとしても、きっと夜景を楽しむ事は出来ないはずだから……。
「だからって、そんなにはしゃがなくても」
のんびりと彼女を眺め、はじめが深い溜息を漏らす。
そんな彼女が可愛いと思っているのだが、惚れた弱みなのか、その事を口にするつもりは無い。
それに気づかれると癪なので、表情に出すつもりも無いようである。
「来年もこうして一緒に見に来れるかな?」
満面の笑みを浮かべ、クリスがはじめに問いかけた。
こんなに楽しい気持ちになれるのだから、来年はもっと楽しくなるはずだ。
「見れるよ。来年も。これから先も」
そして、ふたりの目がそっと閉じられ、相手の気持ちに応えるようにして、唇を重ね合わせるのであった。
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