●一番温かいのは・・・
「すごく……綺麗ですね……」
幸せそうな表情を浮かべ、レイラがプールに浮かんだキャンドルを眺める。
水面には器に乗ったキャンドルがいくつも浮かんでおり、その灯かりがゆらゆらと揺れていた。
キャンドルの明かりはとても優しく、ついつい時間を忘れて魅入ってしまう。
幻想的な雰囲気の中、まわりにいるカップル達は愛を囁きあい、クリスマスの思い出を作っていた。
「綺麗っすね……、ホントに」
彼女と同じようにキャンドルを眺め、翔が納得した様子で返事をする。
しかし、それ以上にレイラがとても綺麗に見えた。
それだけ彼女の事を好きだからかも知れないが、こうやって一緒にいるだけでホッとした気持ちになれる。
ふと、彼女の方を見ると、寒そうに手を擦り合わせていた。
プールにキャンドルを浮かべるため、片手だけ素手のままでいたせいだろう。
翔は自然の流れで、その手を握る。
あまりにも自然に行動する事が出来たので、自分でも驚いているのだが、恥ずかしい気持ちを誤魔化すようにして麦藁帽子で顔を隠す。
「えへへ、なんかちょっと恥ずかしいです……」
一瞬、レイラはハッとした表情を浮かべたが、翔の気持ちを理解したのか、ゆっくりと握り返す。
その途端に握られた手を通して、翔の温もりが伝わってきた。
レイラはその優しさを感じて嬉しい気持ちになり、少し照れた表情を浮かべて頬を染める。
「俺の……想いは変わりませんから」
プールに浮かぶキャンドルを眺め、翔が小さくぼそりと呟いた。
麦藁帽子を目深に被り、顔を隠したまま呟いたせいで、彼女には聞こえていなかったかも知れないが……。
しばらくの間、無言の時間が流れる。
だが、決して悪い気持ちではなかった。
「お誘いしてくださってありがとうございます。とっても素敵な思い出ができました」
そして、キャンドルパーティが終わり、レイラが笑顔を浮かべてお礼を言う。
「俺も……、素敵な思い出になりました。ありがとう……レイラさん」
翔も彼女の気持ちに応え、笑顔で答えを返すのだった。
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