河崎・統治 & 島津・有紗

●クリスマスと誕生日

 楽しいクリスマスの時間はあっという間に過ぎていく。クリスマスパーティを存分に満喫した二人は帰り道の途中、近くにある静かな公園で一休みすることにした。
「楽しかったけど少し疲れたね」
 公園のベンチに腰掛け、有紗は幼馴染の顔を見上げ微笑んだ。
「ああ、そうだな」
 いつもより少し落ち着かない様子であたりを見渡しながらも、アリスに寄り添うように隣に立つ統治。にもかかわらず、一向にベンチに座ろうとしない統治を見て有紗は首をかしげる。
「座らないの?」
 少女の問いかけ慌ててにうなずいた統治は、何かを気にするように更にまわりを見回している。誰も公園に居ないことを確認すると、統治はそっと懐に隠していたものを取り出した。
「ほれ、受け取れ」
 照れていることを隠すようにぶっきらぼうに渡された包みには、彼女のドレスに合わせたような赤いリボンが結ばれている。
「あら、クリスマスプレゼントならさっき貰ったわよ?」
 いぶかしげな表情でアクセサリーショップのロゴが入った桜色の袋を受け取る有紗に、喜んでもらえるものか内心では少し心配になりながら、尚もぶっきらぼうに統治は言う。
「今日はお前の誕生日だろうが」
 びっくりしたように有紗の目が丸く見開かれる。
「嬉しい! ちゃんと覚えていてくれたんだ!」
「俺が祝ってやらんで、家族以外の誰が祝ってくれるんだ?」
 当然のように答える彼の言葉に有紗は輝くような笑顔を浮かべ、袋を抱きしめる。
 思った以上に彼女が喜んでくれたのは、嬉しいけど少し照れくさくもあり、視線をそらす統治。それを見て、からかうように有紗がひじで突っつく。
「何よー、照れちゃって」
 プレゼントを両手で大切そうにかかえ、本当に嬉しそうに笑う有紗につられ、統治も笑顔になる。
「ハッピーバースディ、メリークリスマス!」
「メリークリスマス!」
 楽しそうな二人を優しく街灯が照らす。幸せなクリスマスと大切な誕生日を過ごす二人を祝福するかのように。




イラストレーター名:笹本ユーリ