天静・輝 & 神凪・ロゼスタ

●メリークリスマスだね♪

「寒いねー。子供は風の子! って誰が言ったんだろ」
 冬の風に吹かれながら、輝はロゼスタとうっすら積もった雪を踏みしめて歩いていた。目指す場所は、大きなクリスマスツリーがある広場。輝達は一緒にツリーを見ようとやって来たのだ。
 気が急いて、どんどん足早に進んでいく輝。一方ロゼスタは、それを追いかけるだけで一苦労。
「輝、あの、そんなにはやく……きゃ!」
「え!? あぶな……っ」
 頑張って追いかけようとして、足を滑らせるロゼスタ。慌ててそれを受け止めようとする輝だが、その動きは間に合わず……バランスを崩して、一緒に雪の中へまっさかさま。
 ぺしゃっ、と軽い音がして、服や指先に雪がくっつく。
「………」
「……ぷっ」
 そんな互いの姿を目にすると、どちらからともなく笑い出す2人。
 立ち上がると、今度は落ち着いて、程良いペースでツリーを目指す。

「うわぁ、大きいね」
「すごいですね……」
 やがて彼らの前に現れたクリスマスツリーは、本当に大きかった。目を丸くして、首が痛くなりそうなくらい上の方を見上げる。
「そうだ。記念に写真撮らない?」
「いいですよ」
 デジカメを取り出して、輝とロゼスタはツリーの前へ。こんな感じかな? と輝が自分達の方に向けたデジカメの角度を調整して、カシャリとシャッターを切る。
 1枚。
 2枚。
 3枚……。
「え、と、何枚撮るつもりなんですか……?」
 どんどん連射していく輝に恥ずかしくなったのか、途中で止めようとするロゼスタ。でも輝としてもカメラを譲るわけにはいかなくて……。
「あ」
 気が付けば、2人はバランスを崩して、そのまま地面にまっさかさま。
 今度は一緒になって雪の上に転がって……またまた、どちらからともなく笑い出す。

 やがて、ツリーを眺めているうちに、輝の隣から可愛らしいクシャミが聞こえる。
 ずっと外にいるうちに体が冷えてしまったのだろうか。
「ロゼ、寒い? 大丈夫??」
 輝は慌てて自分のマフラーをはずすと、それをロゼスタの首に巻く。でも、と断ろうとするロゼスタに「でもロゼが風邪引いちゃったら大変だもん」と、そう笑いかければ、ロゼスタは「じゃあ」と、それを借りる事にする。
「ありがとうございます」
「ううん、気にしないで。それよりも帰ろっか。これ以上体が冷えちゃう前に」
 何かあったら大変だから、と気遣う輝の言葉に頷くロゼスタ。
 2人は最後に、もう1度だけクリスマスツリーを見上げて、2人並んで帰路についた。




イラストレーター名:綾瀬瑠香