仙風・彰人 & 瀬名・琉美

●今…手、繋いで良いかな…?

 イルミネーションでライトアップされた夜の街を歩く、ふたり。
「くー、やっぱ寒ぃなー!」
 真っ白な息を吐きながら、彰人がぶるりと身体を震わせる。
「こんなに厚着をしても、これくらい寒かったら、意味無いですよねー……」
 納得した様子で、頷く琉美。
「まぁなー。琉美、そんな冷えるか?」
 女子である琉美を気遣い、彰人が心配した様子で視線を送る。
「んじゃ、その辺の店でも入って茶でも飲んで暖まるか?」
 脳裏に喫茶店の映像が浮かんだため、彰人が笑みを浮かべて彼女を誘う。
「賛成〜」
 と、琉美。
「うし、んじゃどっか良さそーな店でも探すか!」
 彰人も張り切った様子で、キョロキョロと周囲を見回した。
 クリスマスというだけあってか、辺りに歩いているのは、カップルばかり。
 そこで今更ながら周囲のカップル率の多さに気づく。
「……しっかし、当然っちゃー当然だが、やっぱカップルが多いよなー、この時期は」
 そのせいで、どの店もカップルで埋め尽くされてしまっている。
「俺らも他所から見るとカップルに見えるんかね?」
 素朴な疑問を感じたため、彰人が冗談っぽく呟いた。
「そ、そうかも……しれませんね……」
 その言葉を聞いて、琉美が顔を真っ赤にする。
「ん、どーした顔が赤いぞ?」
 他意も悪意もなく、只ひたすら鈍感にそんな言葉を投げかける彰人。
 その言葉に急に意識したのか、琉美が照れてうつむぎがちになる。
(「今……手、繋いで良いかな……?」)
 内心そんな事を考えながら、琉美が手を繋ぐべきか葛藤し始める。
(「こ、こういう場合は……、手を繋いでも……おかしくないよね。おかしな状況じゃないんだけど……、あたしから手を繋いじゃってもいいのかな……? でも、こういう場合は女の子の方から、手を繋ぐのっておかしいよね……」)
 だが、彰人はそんな琉美の葛藤をよそに、能天気に暖を取れそうな店を探すのだった。




イラストレーター名:蜜来満貴