東梅・白紅 & 白紅の真モーラット

●コタツでクリスマス

「さぁー、今日は楽しいくりすますぱーちーじゃ! 別に恋人と過ごせぬ事に拗ねたりしてないぞえ!」
 半ばヤケになりながら、白紅が無理矢理テンションをあげる。
 だが、余計に寂しくなってしまい、落ち込んだ様子で肩を落とす。
「か、悲しくないんじゃから! こら、ねずみ! 頭を撫でるな! なんだその『僕が居るじゃないですかー』的な慈愛の目は!」
 自分の感情を押し殺すようにしながら、白紅が真モーラットのねずみにツッコミを入れる。
 それでも、ねずみは白紅に擦り寄り、『無理をしなくてもいいんですよ』と言いだけな表情を浮かべた。
「だから、その『すべてお見通しですよ』的な態度はやめぃ! ……く、くそう、今だけは許してやろうぞ……。だから別に寂しくなんかないんじゃぞっ!」
 途端に込み上げてきた嬉しさを堪え、白紅がねずみに対して釘を指す。
 しかし、ねずみはすべてを悟っているような表情を浮かべ、何も言わずに白紅の膝にちょこんと座る。
「さあ、見ろねずみ! この手作り菓子達を! 一応、くりすますっぽくと思ったのじゃが……、和物しか作れないから……くりすますけーき風、芋羊羹じゃ!」
 『妾の自信作じゃ!』と言わんばかりの表情を浮かべ、白紅が炬燵の上にクリスマスケーキ風の芋羊羹と団子を置いていく。
 そのため、ねずみは炬燵から身を乗り出すようにして団子に迫り、白紅に対して心配した様子で視線を送る。
「……何じゃねずみ、その目は! ……一応、食える筈じゃぞ!」
 心の中で『もちろん、味見はしてないぞ』と付け加え、白紅がねずみに対してキッパリと言い放つ。
 ねずみもその事を察したのか、『まぁ、食べる事が出来るのなら問題ありませんね』と言いたげな表情を浮かべる。
「おお、そうじゃ忘れておった! 今日は聖夜、らしいからな! ぷれぜんと、を用意しておいたのじゃ! ほれ、リボンじゃ! お前の尾っぽにつけると良いかと思うてな」
 満面の笑みを浮かべながら、白紅が青いリボンを取り出した。
 その途端にねずみがピョンピョンと飛び跳ね、全身を使って嬉しさを表す。
「そうか! 嬉しいか! うはははは! ……跳ねるな! コタツが揺れる!」
 あまりにも激しく炬燵が揺れたため、白紅がねずみを落ち着かせるようにして取り押さえる。
 それでも、ねずみは自らの喜びを表現し、嬉しそうにパタパタと尻尾を振った。
ほれ、妾が直々に結んでやろうぞ! む……、中々難しいな。……ああ、動くな! 結べぬではないか! ……って、ねずみ! 妾より先に団子を食うとは何事ぞ!」
 ハッとした表情を浮かべ、白紅がねずみを叱りつける。
 そのため、ねずみがジーッと団子を見つめ、我慢する事が出来ない様子でダラダラと涎を垂らす。
「……ふと思ったのじゃが……、こうして二人、一人と一匹かえ? ……まあ良い。二人でのんびりするのは久しぶりじゃな……。最近は色々あった。ほんと、色々とあったのう……。うーむ、いい機会じゃ! 今日は一緒にのんびりしようぞえ! 過去を懐かしむもよし! だからなんだその目は! 『年寄り臭いですよ、ご主人』的な目はやめろ! そして、言っている傍から団子を食うな! ……まったく。でも、いつも妾を支えてくれてありがとうな!」
 そう言って白紅がねずみをギュッと抱きしめる。
 そして、ひとりと一匹は幸せなクリスマスを過ごすのであった。




イラストレーター名:柴崎晴