立積・呼音子 & 茶渡・遥

●ひとつの幸せのかたち

 クリスマスだからと言って、何もクリスマスらしい事をしなくてもいいじゃない。
 普段通りのんびり、まったり過ごしたって良いじゃない。
 ルームメイトで親友同士の呼音子と遥。
 いつも通り夕食を終えて、いつも通りお菓子を食べながらこたつでまったり中。
 クリスマスらしい事と言えば、会話の端々にみられる内容。
「まーったく、ドイツもコイツもサカリやがってマー、ジーザスクライストも誕生日の度に何故か一地域の命が激増してサゾビミョ−な気分だろーニ」
「クリスマスってわざわざ騒ぐ程の事でも無いわよね」
 呼音子 の言葉に全くだと頷く遥。
「…アー、でもハルカ、オマエはどーニャんだ? クリスマスにイチャつく相手の目当てとか、ニェーの?」
「家族と一緒でもあるまいし、別に恋人だって居ないしね……」
「居ないか。ソカ」
「…って、失礼な事言うわねコネコ!?」
 こたつの上に顔を突っ伏せながら、視線は遥の方を向けて呼音子が言葉を続ける。それに答えていた遥だけれども、呼音子の言葉に勢いよく「私だって恋愛くらい……」と言い返そうとして止まった。
 ……できるのだろうか?
 まだ恋愛経験がないゆえに、それはまだ未知数で分らないと遥がため息をつくものの、視線を呼音子に向けて薄く笑う。
「ほっとしてるの?」
「って、ホッとニャんかしてニェーよバーカ!? オマエ見たいなツンツンじゃ恋愛ゴッコの一つも出来ニャイんじゃって心配してヤッタだけだ!」
「ともあれ、心配してくれてありがとう。それとも、寂しいだけかしら?」
「さ、寂しいニャんて思う訳ニェーだろバーカバーカ!」
 楽しげに声をあげながらも、何やらこそこそと様子を伺っているふたり。
 ふたりとも相手には見えない様にこたつに隠し持っているプレゼント。
 クリスマスなんて関係ないなんて、言いながら用意したプレゼントをいつ、相手に渡そうかと、タイミングを計り合っているのだが、なかなかタイミングが掴めずに軽口ばかりが増えていく。

 いつプレゼントを手渡すのか、この牽制がいつまで続くのか、それは二人のみぞ知る。
 今宵、メリークリスマス。
 相手の普段見れない驚いた顔と、喜ぶ顔の両方が楽しめるかもしれない。
 女同士の友情は脆いなんて言うけど、ふたりの友情はどちらかに恋人ができたとしても、変わる事は無さそうだった。




イラストレーター名:○島