●これがあたしの愛だ!!
何もこの日じゃなくてもいいじゃない。
神様がいるのなら、本気で恨んでやる。
何でわざわざ、よりによってクリスマスイブに補習を入れるのか。
補習なんてさぼっちゃえばいいんだよと、祭子が都をそそのかそうとしたものの、勉強に関して真面目な都がそれを許すはずもなく、祭子を叱咤しながら、引きずって学校へと連れてきた。
自分の教室で自分の席につく祭子。
補習が始まり、静かにしている祭子。だが、しっかりと聞いてるわけではない。
(「つまんないなー」)
ぼーっと窓の外を見てみる。
補習は長い。それだけで時間はつぶせない。
(「みやみやへのプレゼント、どうしようかなー」)
次はそんな事を考えはじめると、チラチラと雪が降り出した。
細かい雪は次第に降る量を増やし、しばらくすればうっすらと校庭に雪が積もりだす。
雪が降り出した事で、小等部の生徒達が甲高い声を上げて、校庭で遊びだす。それを教室から見ているしかない祭子が、何かを思いついた。
チャイムが鳴ると同時に、教室を飛び出して行く祭子。
もちろん次の時間の補習はサボり。
向かった先は都のいる校舎の前。
大きめの木の枝を拾ってきて、校庭に何やら書き始める。
自分の近くで何かが始まっている事なんて知らずに、真面目に補習を受けている都。
ただ早く終わってクリスマス会に行きたいなと考えているのはさっきまでの祭子と同じ。
ぼんやりと補習を受けて、そんな事を考えていると、次第に窓側の席の生徒達が、ザワザワと騒ぎはじめる。
何かあったのだろうかと、窓側からもう一列横の席の都も身を乗り出して、窓の外を眺めてみる。
そしてその目を疑った。
祭子がこっちに向って手を振っている。それだけならまだしも、その場所は大好きと書かれた大きなハートの中。
「うそでしょー……」
思わず額に手を当て、そう呟くしかなかった。
補習をさぼった祭子はここで大きなハート書き、その中に都へのメッセージを書いていたのだった。
出来上がった祭子は得意気に、都へと大きく大きく手を振る。
「みやみやーーーーー! 見える!? 聞こえる!? あたしのきもちーーーーーーーー! だーーーーーーいすきーーーーーーーーー!!」
大きく張り上げた祭子の声は、都の教室まで良く届き。
その場にいた生徒達全員の耳にも、もちろん入ってくる。
祭子が手を振れば振るたびに、都はクラスメイトに冷やかされて。顔を真っ赤にしながら、都は一体どんな仕返しをしてやろうかと考えていた。
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