花乃宮・深都貴 & 白馬・旋

●雪見聖夜―誓う想い―

 静かだった。
 雪の降る音も、風の音も今は無く。
 少し肌寒く感じるはずなのに、どこか暖かいと思うのは、去年すれ違い一緒に過ごせなかった恋人が、隣にいるからかもしれない。
 そういえば、と思う。
 一緒にゆっくり出来るのが、当たり前になっている。
 その事に気づき、旋は思わず、笑みを浮かべた。

 いつもは洋服を着ている旋。
 けれど、今日は着物を着ている。着ている服が違うだけで、こんなにも印象が替わってしまうものなのか?
 弾む鼓動。この鼓動は、なるべくならば、知られたくない……。
 深都貴は盗み見るように、もう一度、旋を見て。
「どうした?」
 声をかけられた。
「な、なンでもないわよ」
 そんな深都貴の様子に、旋は笑い出し、そして、深都貴を抱き寄せた。
「ほんと、可愛いな」
「ば、ばかっ 褒めてもなンにも出ないンだから」
 けれども、旋は気づいていた。深都貴の影にある包みの存在に。
「えー出ないのかよ。その包み、俺へじゃないわけ?」
「そう思ってたけど、考え直す事 出来るわよ?」
 今度は深都貴が笑う番。くすくすと笑みを浮かべながら、旋を窺う。
「でも、仕方が無いからあげるわ」
 そういって、手渡された深都貴からの贈り物。
 包みから出てきたのは、落ち着いた印象の綺麗な手鏡であった。
「人前に立つ事、多くなるンでしょ。しっかり身だしなみ整えてね」
「あぁ、サンキュー。大事にする」
 嬉しそうにそう告げる旋に、深都貴は頬を赤く染めていく。

「じゃ、俺からもな」
 しゃらんと首にかけられたのは、一つの指輪が通されたチェーン。
「! これ……」
 驚く深都貴に旋は続ける。
「お前の銀と俺の青、これでいつも一緒な」
 そして、照れ隠しのキス。
 つうっと、一滴の涙が零れた。それに気づいて、旋は微笑む。
「泣くなよ」
「泣いてないわよっ」

 ずっと一緒にいられる事を願う。
 だが、来年はきっと忙しくなるだろう。
 こうして逢える時間も、限られてくることだろう。
 それでも……心はずっと側にある。
 そう、旋から贈られた指輪のように……。




イラストレーター名:Bee