●sweet christmas
『X'masの夜にこの木の下で愛を誓い合った二人は永遠に両想いで居られる』
街の広場に飾られているX'masツリーには、ずっと前からそんな言い伝えがあった。
そんな噂を知ってか知らずか、X'masの夜に彼女が連れてきたのは、このツリーのもと……。
「綺麗だね……」
X'masツリーを眺めながら、天常がぼそりと呟いた。
目の前にあるX'masツリーは、装飾の豪華さだけでも有名だが、それ以上に美しい。
「はい♪」
天常と一緒にX'masツリーを見つめ、さくらも嬉しそうにこくんと頷いた。
それから、ふたりは時間も忘れて、X'masツリーを眺めた。
「……あの……天常?」
申し訳なさそうな表情を浮かべ、さくらが遠慮がちに彼の名前を呼ぶ。
その言葉に気づいて天常が振り向き、『なんだい?』と答えて笑顔を浮かべた。
「……その……キス……してくれませんか……」
甘えた声でキスをねだり、さくらがそっと瞳を閉じる。
天常もそれに応えて彼女の肩に両手を乗せ、ゆっくりと顔を近づけていく。
(「たまには僕も甘えてみようかな」)
そんな考えが天常の脳裏を過ぎり、ふっと小さく笑いながら、彼女にぱちんとデコピンをする。
「!?」
驚いた表情を浮かべてパッと目を開き、徐々にさくらの顔が悲しげな表情に変わっていった。
さすがに天常も『やり過ぎてしまった』と反省したのか、優しく彼女の頭を撫でる。
「たまにはさくらからしてよ?」
悪戯っぽく微笑みながら、天常がゆっくりと瞳を閉じた。
「……えっ? わ、分かりました」
覚悟を決めたのか、彼女の手がおずおずと肩に乗せられる。
彼女の身体は小さく震えていた。
その手を通して心臓の鼓動が聞こえてくる。
一瞬……、頬に柔らかいものが触れ、すぐにその感触がなくなった。
その感触が何だったのか、知りたくなって、薄く目を開けてみると、そこにはリンゴのように顔を赤らめて頷くさくらの姿。
……どうやら、そういう事らしい。
「だめ……ですか」
今にも泣きそうな表情を浮かべ、彼女が搾り出すように声を出す。
彼女にとってはこれが精一杯。
自分なりに頑張ったのだと、潤んだ瞳が訴えている。
「今度はちゃんと、ね?」
彼女のすべてを包み込むようにして抱き寄せ、天常が優しく口付けをかわす。
御互いに心の中で、永遠の愛を誓いつつ……。
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