●恋する乙女のアビリティ「ケーキあ〜ん」(連携・抱き)
しんしんと降る雪が綺麗な結晶模様を窓に描く。恋人同士、二人っきりでクリスマスを楽しむ和樹の部屋では、強力なアビリティが炸裂していた。
「とっても上手くできたんだよっ」
伊那穂が満面の笑みを浮かべケーキを持ってきた。去年のブッシュ・ド・ノエルとは違うシンプルなショートケーキだが、今回のケーキは前回よりずっとうまく作れた自信がある。『Merry Christmas』と書かれたチョコプレートを少し動かし伊那穂がケーキを切りわける間に和樹がコップにコーラを注ぐ。
渡されたケーキを食べようと和樹がスプーンをとろうと伸ばす手を伊那穂はそっと押さえる。不思議そうな顔で自分を見る和樹にいたずらそうに笑うと伊那穂はスプーンをとりケーキをすくう。
「はい先輩! あーん」
おひさまのように明るい笑顔を浮かべるとケーキを和樹に差し出した。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
思わず赤面して思わず後ろにのけぞる和樹。嫌ではないがかなり照れくさい。微妙な抵抗をする和樹を追うように伊那穂は身を乗り出して食べさせようにする。腕で胸が強調されてさらに和樹は照れくさくなる。思わず目が行きそうになるのを必死にそらしながら数馬は観念したように口をあける。
「はい、あ〜ん!」
照れながらも素直に食べる和樹にさらにもう一口『ケーキあ〜ん』をする伊那穂。ケーキを指差しながら和樹に問いかける。
「甘いでしょ?」
「うん」
「美味しいでしょ?」
「うん」
「可愛いでしょ?」
「うん」
最後の質問のとき、指は伊那穂自身をさしていた。勢いに誤魔化されて思わず本音が出てしまった和樹が抗議の声を上げる。
「その聞き方は反則だろっ!」
その言葉が終わるか終わらないかのうちに伊那穂はわーいと歓声を上げて和樹に抱きつく。照れたり恥ずかしいこともあるが楽しい思い出はそれを帳消しにして有り余るほどだった。伊那穂と恋人になれた幸せをかみ締めながら和樹はおひさまを抱きしめた。
「まったく……そんな聞き方をしなくても伊那穂は可愛いに決まってるだろ?」
赤いほほを隠すかのように上を向いて小さな声で呟きながら。
恋する乙女のアビリティ、Just Attack!
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