●クリスマスの二人〜クリスマスまでもミッションか〜
「……ミッションだ」
緊迫した空気の中で、陣がミッションの開始を宣言する。
場所は大きなクリスマスツリーのある広場。
綺麗なイルミネーションに彩られた中、サンタコスチュームを着た、ふたり。
「クリスマスもミッションか……」
呆れ気味な表情を浮かべ、ターンが深い溜息を漏らす。
ふたりのミッションは、サンタの格好になって街頭に立ち、色々な人達にプレゼントを配り歩く事。
それ自体はそれほど難しくないミッションだが、こんな格好をしているせいで、物凄く目立っている。
「いや、クリスマスだからこそ、実行する意味がある」
クールな表情を浮かべ、陣がキッパリと答えを返す。
この日を逃せば、次に同じミッションを実行する事が出来るのは、来年。
そんな悠長に待っていられるほど、陣達には余裕が無い。
「まぁ、特に断る理由も無いが……」
ゆっくりと辺りを見回しながら、ターンがプレゼントの入った袋を抱える。
プレゼントを手渡すターゲットは、あえて絞り込んでいない。
それを必要としているプレゼントが、きちんとその人に届くように願いを込めて……。
そのおかげもあってか、プレゼントがあっという間に無くなった。
みんな笑顔を浮かべ、感謝の言葉を彼女達に送る。
喜んでいる人達の顔を見ているだけで、何だかこっちまで嬉しくなってきた。
それがふたりにとってのクリスマスプレゼント。
「みんな、喜んでいたな」
一通りプレゼントを渡し終え、ターンが人通りのない公園でクスリと笑う。
最初は乗り気でなかったターンも、プレゼントを配っていくうちに、陣の気持ちを理解する事が出来た。
「いつもありがとうな。そして来年も君と共にクリスマスを過ごしたいな」
ターンにプレゼントを手渡し、陣が後ろからターンに、ギュッと抱きつく。
一瞬、何が起こったのか分からず、ターンがジタバタと暴れていたが、次第に大人しくなって、まったく抵抗しなくなる。
「「メリークリスマス」」
ふたりの声がクリスマスの夜空に響く。
そして、ふたりは幸せなクリスマスを過ごすのだった。
| |