●聖夜に咲く花
蝋燭の明かりだけが寝室に灯る聖なる夜。
とものはヴァナディースの家に招待され、一夜を共にする事になった。
「あっ……、パジャマがない」
自分の持ってきた荷物を漁り、とものが気まずい様子で汗を流す。
ひとつずつ荷物チェックした時にはあったはずだが、何度探してもパジャマが見当たらない。
それはつまり……、荷物チェックをした時に、パジャマを出したまま、家を出てしまったと言う事を意味していた。
「ううっ、どうしよう……」
流石にそのままの格好で寝るわけにも行かないので、いま来ている服をするりと脱ぎ捨て、ヴァナディースのYシャツを寝巻き代わりに借りてベッドに入ろうと思った瞬間……。
「んぅ!?」
ヴァナディースがいきなりとものの両手を押さえ、壁に押し付けるようにしながら、貪るようにして唇を奪ってきた。
「ちょっ……、いきな……にを……」
突然の出来事にまったく対処する事が出来ず、とものが戸惑いの表情を浮かべて羞恥に顔を真っ赤にする。
「……可愛いあなたが悪いのよ。めちゃくちゃにとろけさせてあげる♪ 私に襲い掛かるくらいに♪ 私の唇も、私の胸も、私の身体は、あなたのものなのよ♪ そう、心もあなたのもの♪ だから、今夜は一晩中、あなたの身体を味わってあげる♪ 私の身体を味あわせてあげる。……寝かせないわよ。ともの♪」
唾液の糸をゆっくりと引きながら、ヴァナディースが彼女の耳元で囁きかけた。
とものはその言葉を聞いて抵抗する事も忘れ、呆然とした表情を浮かべて聞き入れる。
それと同時に彼女の中に今までとは違う感情が芽生えていく。
(「……もう少しスュールと一緒にいたい……。……もっとスュールとくっついていたい……」)
気がついた時にはヴァナディースの胸を掴み、舌を出して自分からねだるように唇を重ね合わせていた。
普段のとものならば自分からキスをする事などはない。
だが、今日はいつもとは違う特別な夜。
「夜は、まだまだ長いから……、今日は、ずっと、いっしょ……ね?」
そう言って、とものが蝋燭の灯りを……消した。
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