白石・綾香 & 神谷崎・真奈

●Memorial Noel

 少し肌寒い路地をぬけて、綾香は待ち合わせ場所へと急ぐ。
 急ぐといっても、遅刻しているわけではない。むしろ早いくらいだ。
 けれども、早足になってしまうのは、きっと大好きな真奈に会うから。それに……。

 ふわふわで可愛らしい帽子をかぶって、真奈は待ち合わせ場所へと向かっていた。
 もうすぐ、大好きな綾香に会えると思うと、思わず笑みがこぼれてしまう。
「にゅ!」
 その姿を見つけて、真奈は瞳を真ん丸くした。
「綾香ちゃん、先に来ていたのです?」
 真奈の声に綾香は振り向き、笑みを浮かべた。
「はい。今日は真奈さんと一緒のクリスマスですから、早めに来ちゃいました」
「ふみゅ、真奈も早めに来たのに、負けてしまったのですよ」
 負けたといっても、そんな素振りも見せず、むしろ喜んでいるようである。
「じゃあ、行きましょうか」
「楽しいクリスマスパーティーへ!」

 二人で過ごす、楽しい時間はあっという間に終わりを告げて。
 気がつけばもう、夜になっていた。
 路地に積もった雪を踏みしめ、二人は一緒に帰っていく。
「とっても楽しかったのです。これも綾香ちゃんと一緒だったからですねぇ」
「それは私の台詞ですっ。私も真奈さんと一緒で楽しかったです」
 繋いだ手から感じる、暖かい温もり。
「にゅ! そうなのです! 忘れるところだったですよ」
「どうしたんですか?」
 突然、真奈が声をあげ、鞄からごそごそと、綺麗に可愛くラッピングされた小箱を取り出した。
 それを見て、綾香も急いで小箱を取り出す。良く見ると、真奈の箱と色違いのようであった。
「メリークリスマス、綾香ちゃん」
「はい、メリークリスマスです、真奈さん」
 二人が交換し合ったもの。
 それはお揃いの指輪。
 貰った指輪をさっそく指にはめて、二人は微笑んだ。
「……ここで帰っちゃうの、なんだかもったいないのです」
「……私も、おんなじこと考えてました」
 二人は囁き合い、また笑みを浮かべる。
 クリスマスの夜は長い。繋いだ手には、きらきらと指輪が輝いていた。




イラストレーター名:土岐夏目