●サンタとトナカイの幸せな日
飾られた色取り取りの料理やケーキ。
ゆっくりと流れる、暖かい空気。
甕速もブラッディも……卒業してから二人でいられる時間は減った。
お互いに進んだ道があり、そしてどちらもそれなりに忙しいのだからそれは仕方がない。
だからこそ、こうして二人きりでいられる時間を大切にしようと2人は思うのだ。
「メリークリスマス。今年は奮発したぞ」
トナカイのを着ぐるみを着こんだ甕速が笑う。
本人も自覚している目つきの悪さは何処へやら。
ブラッディと2人きりでいられる嬉しさが、自然と笑顔を形作っているのだろうか?
「美味しそぉー♪」
同じように目を輝かせる、サンタ風の衣装のブラッディも、やはり甕速と2人きりでいられる事が嬉しくてたまらない。
普段ならしている遠慮も、今日この時だけは必要ない。
いや……今日は、遠慮をしてはいけない日なのだ。
それを知っているからこそ、2人は満面の笑顔だった。
クリスマスと言えば、まずはケーキから。甕速が火をつけ、ブラッディがそれを消し。
「ほら、あーん」
「ん、ん、ん……あーん♪」
甕速が一口サイズに切ってフォークに刺して差し出せば、ブラッディがそれをパクリと食べる。
ケーキの甘さよりも、もっともっと甘い2人。
待ち望んでいた、今日という幸せな日に相応しい……甘い、暖かい空気が流れる。
「はい、あーん」
「ん……あ、あーん」
お返しに、今度はブラッディが甕速にケーキを差し出して。
またお返しに、甕速がブラッディに料理を差し出す。
そうやって互いに食べさせあっているうちに、あれだけあった料理もなくなっていく。
すっかりお腹も一杯になった二人は、色んな事を話し始める。
それは、なんでもない普通の会話だけど。
自分が話せば相手から返って来て、相手が話せば自分から返す。
そんな普通の事が、とても楽しかったのだ。
「なぁブラッディ」
「んー?」
そんな普通の会話の中で、普通に甕速は、そう切り出す。
「好きだぞー」
「俺ぇもヒーちゃんのこぉと、大好きだぁよー」
それは、互いに分かっていた答え。
けれど、それは誓い。
クリスマスの夜にかわされた、小さな……けれど、何よりも強い……そんな、輝きのような誓い。
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