●初めてのクリスマス!
既に日は沈みかけているが、クリスマスはまだまだこれから。
オーメントを飾り終えたふたりは、最初に交わした約束のまま、足並みも揃えて賑わしい校内をお喋りも交え、楽しく歩き回っていた。
だが、楽しいからこそ、時間が経つのも早い。
あっという間に日が落ち、イルミネーションの明かりが灯っていく。
お互い寒さに慣れているとは言え、今まで慣れ親しんだ土地とは違う場所。
初めて過ごす冬の夜空からは、ポツポツと雪が降ってきた。
オーメントで飾られたクリスマスツリーを眺め、ふたりが真っ白な息を吐く。
そんな折、アルノーは懐に違和感を覚えた。
気になって自分の懐をまさぐると、そこから姿を現したのは、無駄に長い漆黒のマフラー。
「……あれ? なんで、こんな物が?」
不思議そうに首を傾げる、アルノー。
まったく……、記憶に無い。
「きっとサンタさんからの贈り物だよ」
屈託の無い笑顔を浮かべ、華月がきっぱりと断言する。
彼女がそういうのなら、サンタからのクリスマスプレゼントかも知れない。
そうでなければ、懐の中に漆黒のマフラーが入っている理由がつかなかった。
「それじゃ、サンタさんに感謝しないとね」
満面の笑みを浮かべながら、アルノーが自分の首にマフラーの片端を巻く。
そして、華月の首元にも同じようにして、漆黒のマフラーの片端を巻いた。
「それじゃ、行こう♪」
彼女の手をしっかりと握り締め、アルノーが引っ張るように駆けていく。
だが、その直後。
何かを思い出したのか、アルノーが華月にくるっと向き直った。
「本当のクリスマスはこれからなんだからね」
寒さからか頬を真っ赤に染め、アルノーが満面の笑みを浮かべて華月に告げる。
そのため、華月も笑顔を浮かべて力強く頷き、改めて駆け出したアルノーの後を追うようにして、彼の手をぎゅっと握り返して精一杯駆け出した。
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