●小さな恋人たちのクリスマス
ぱらぱらと雪が降る中、ふたりで一緒に夜道を歩く。
辺りの木々は雪によって真っ白な化粧を施したようになっており、歩くたびに雪の柔らかな感触が、足元を通じて伝わってきた。
そんな中、セトは緊張した面持ちで、何か言いたそうな表情を浮かべている。
いつ、言うべきか。
それとも、いま言うべきか。
まるで呪文ように、脳裏で繰り返される言葉。
頭の中で結論を出す事が出来たとしても、タイミングを掴まなければ行動には移せない。
だからと言って、このまま何もしなければ、一生後悔する事になるだろう。
その事が分かっているので、セトもようやく行動に移る。
先程まで自分の心を支配していた緊張感を打ち砕き。
「あの……。これ、プレゼント!」
純白の長いマフラーを取り出し、セトがシベリアの首に巻き始める
最初の予定では、彼女に何か言うつもりでいたのだが、マフラーを渡した途端に頭の中が真っ白になった。
それでも、彼女の首にマフラーを巻く事が出来たのだから、セトの目的はとりあえずではあるが、果たされた事になる。
「あ、ありがとうございますわ、セト。せっかくですから、一緒にどうですか」
恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながら、シベリアがセトの首にもマフラーを巻いていく。
ふたりとも、心の中で恥ずかしい気持ちが渦巻いていたが、いつしかそんな事など忘れて自然と笑みが零れてきた。
「ありがとう、シベリア♪」
シベリアにマフラーを巻いてもらい、セトが笑顔を浮かべてお礼を言う。
彼女と一緒に巻いたマフラーはとても暖かく、身体だけでなく心までぽかぽかにしてくれた。
「世界で一番愛してるよ♪」
さりげなく彼女と手を繋ぎ、セトが照れた様子で肩を寄せる。
「わたくしも世界で一番愛してますわ♪」
シベリアもさらに顔を真っ赤にして、彼女の思いをしっかりと受け止めた。
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