伊吹・セト & 田中・シベリア

●小さな恋人たちのクリスマス

 しんしんと粉雪が舞い落ちる。
 クリスマスツリーの電飾に照らされ、淡い光を放つそれは、まるで地上に降り注ぐ星のよう。
 そんな中に、小さな恋人達の姿があった。

 手を繋ぐのも恥じらうほどの、初々しい恋人達。
 けれど先程から、セトは緊張した面持ちで、何か言いたそうにシベリアの顔をちらりと見ては、また視線を逸らすの繰り返し。
「……?」
 一体どうしたのだろう?
 不思議に思ったシベリアが、ふと足を止めたその瞬間───
「あの……これ、プレゼント!」
「きゃっ」
 セトの手から、シベリアの首へ。
 フワリと優しく掛けられたそれは、真っ白な長いマフラーだった。
 驚きと恥ずかしさ、そして何より嬉しさに、シベリアの頬が赤く染まる。
「あ、ありがとうございますわ、セト。せっかくですから一緒に……」
 シベリアはちょっと照れながらも、長いマフラーの一端を、セトの首へと巻いてあげた。
「ありがとう、シベリア♪」
 セトも笑顔で礼を言い、シベリアの顔を嬉しそうに見上げる。
 そしてどちらともなく繋がれた小さな手。
 指先から、掌から、互いの体温が伝わってくる。

 真っ白な雪が舞い落ちる中、手を繋ぎ、肩を寄せ合って歩くふたり。
 首元で揺れるマフラーが、ふたりの距離をグッと縮める。
「世界で一番愛してるよ♪」
 照れながら、けれどしっかりした声で、セトが愛の言葉を紡ぐ。
「わたくしも世界で一番愛してますわ♪」
 シベリアも、真っ赤な顔のままでそう返す。
 互いの想いを改めて言葉にすれば、沸き上がってくるものは、今まで以上の愛おしさ。

 ふたりが歩くたびに揺れる、長くて暖かな白いマフラー。
 そこに包み込まれているふたつの笑顔は、きっと、世界中の誰よりも幸せ………。




イラストレーター名:土方