●お……美味しいのじゃよ?
クリスマス、それは恋人同士の素敵な日。
テーブルの上に続々と並べられていく料理は、全て伊留麻の手作り。
綺麗に飾り付けられた部屋。
そして、サンタ衣裳の伊留麻。
そう、此処は伊留麻と都の、2人だけのクリスマス会場。
自分を最高のおもてなしで出迎えてくれる伊留麻を、都は愛おしい目で見守る。
普段ならば手伝うのが優しさだけれども。
今日この時だけは、見守るのが愛情なのだ。
「もう少しなのじゃよー」
パタパタと急ぐ伊留麻の足取りは、何処となく危なっかしい。
黙って見ていてほしい、とは言われているものの。
こうも危なっかしいと見ていてハラハラすると都は思う。
「あ……っ」
転びかける伊留麻。彼女の一挙一動にハラハラして、都は気が気では無い。
やっぱり手伝うべきかと思い腰を浮かせた、その時。
「あ、あわわっ!?」
「……おっと!」
足元の何かに引っかかって転んだ伊留麻。
痛みを覚悟して目を瞑るが……いつまでたっても、その痛みはこない。
「……あ、あれ?」
「大丈夫?」
言われて気づくのは、柔らかい感触。
まさかと思い目を開けると、目の前にあるのは都の顔。
「ひゃあっ!?」
思わず上がる声と、伊留麻の優しい笑顔。
どうやら、都がタイミングよく受け止めてくれたようだが……。
タイミングが本当に良かったのか、都の腕でしっかりと抱き上げられソファーに座った格好になっている。
お姫様だっこ……まさに、そんな状況だったのだ。
暖かくて、優しくて、恥ずかしくて。
こんな気持ちをなんていったか、思い出せなくて。
「はい、あーん」
そのままの笑顔で、ショートケーキのイチゴを摘まんで伊留麻の口元に持っていく都。
そのまま受け入れるのは恥ずかしいけれど、やっぱり嬉しくて。
口の中に広がったイチゴの甘みの味は、幸せの味なのだろうか。
そして、都はようやく思い出したその言葉を、幸せ一杯の笑顔で紡ぐ。
「メリークリスマス、都……大好きじゃよー♪」
思わず出たそんな言葉は……偽らない、素直な気持ち。
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