●サンタさんからのステキなプレゼント
……しーっ!
ジタバタと靴下の中で暴れるアザラシに向かって、人差し指を口元に当てて。
にょろは再び静寂が戻ってきた暗い部屋の中を、そろりそろりと忍び足で歩く。
真夜中の侵入者。
そんなにょろの格好は、ミニスカートなサンタクロース服。
そう――今日は、クリスマス。
そして、にょろサンタの目的は。響の枕元にプレゼントを置いて、彼を驚かせることなのである。
きっとすごくビックリするだろうな、と。
ベッドで眠っている彼が驚いた時の顔を想像して、声を立てず笑うにょろ。
だが。
(「むー。これじゃ、起こさないのは難しいかもにゅー」)
ぐるりと部屋に並ぶ本棚。そして寝る直前まで読書をしていたのか、響のベッドの周囲は本だらけだ。これでは、ベッドのすぐそばまで近づけず、枕元にそっとプレゼントを置くことは難しい。
にょろは少し考えて。仕方なく、ある行動を取ったのである。
ギシ……と、微かに軋むベッドの音。
ベッドに乗ったにょろは眠っている響を跨ぐような体勢になりながらも。
彼を起こさないように注意しながら、慎重にゆっくりと枕元へと向かう。
そして無事、プレゼントを置くことに成功した。
だが――その時。
「俺はサンタ自身の方がほしい」
しっかりと、にょろサンタを捕まえて。静かだった部屋に彼の声が響いた。
普段かけている眼鏡を外し、前の開いたワイシャツを羽織った響の姿。
そんな寝巻き姿な彼の瞳は、いつの間にか開いていたのだ。その瞳に、にょろの姿だけを優しく映して。
そう、響はとっくに気がついていたのである。自分だけの、可愛いサンタクロースの侵入に。
「放さないと、襲っちゃうけどいいのかにゅー?」
ニヤニヤと笑みを宿し、にょろは響に言ったが。彼はそれでも捕まえたその手を離す気配はない。
むしろ――かまわない、と。
そう言っているような柔らかい微笑みが、彼の顔には浮かんでいたのである。
結局、にょろが響に開放されることはなかったが。
にょろサンタクロースはこれで、無事に届けることができたのである。
彼が何よりも一番欲しいと思っていた、最高のステキなプレゼントを。
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