蓮井坂・詩織 & 涼城・紗夜

●いちばんのプレゼント

「美味しかったね」
「ああ、悪くない」
 クリスマスムードが漂う中、ふたりはお洒落なレストランの店内で、楽しく食事を終えて、口々に感想を述べていく。
「いつもありがとう、詩織。これからもずっと一緒にいてね」
 彼女に感謝の言葉を送り、紗夜がプレゼントが渡す。
 それは、ローズクォーツがあしらわれた、この世に二つしかないというミニリングのペアネックレス。
「ありがとう、紗夜」
 プレゼントが貰えた喜びと、ずっと一緒にいたいという気持ち……。
 そして、彼女も同じような気持ちを抱いてくれた事への嬉しさが込み上げ、詩織が最高の笑顔を浮かべる。
「ねぇ、紗夜。手を出してもらっていいかい?」
 紗夜から差し出された手をそっと握り、詩織が彼女の薬指にシルバーの指輪が嵌められた。
 ホワイトエナメルが装飾されたペアリングが、ライトの光を浴びて淡い輝きを放つ。
 お互い照れ臭そうにお礼の気持ちを伝え、貰ったプレゼントを嬉しそうに眺めた後、一緒に店を出て夜の街を歩く。
「手、繋ごっか」
 真っ白な息を吐き捨て、詩織がゆっくりと手を差し出した。
 紗夜はその手に自分の手を重ね、笑みを浮かべてギュッと握る。
「今日は素直なんだね、紗夜。いつもはイジワルばかり言うのに」
 その言葉を聞いて、紗夜の顔が真っ赤になった。
 確かに、いつもより素直になっているかも知れないが、今日は特別な日なのだから仕方が無い。
「えぇ? もう、詩織ったら……」
 大きく頬を膨らませ、紗夜が詩織を睨む。
 その表情を見て詩織がイタズラっぽく笑った後、こんな風にクリスマスを一緒に過ごせる嬉しさを実感し、優しく彼女に微笑みかけた。
 彼女もそれに応えるようにして微笑みかけ、先ほどの出来事が嘘だったかのように笑い出す。
 そして、ふたりはイルミネーションの輝く街中を、仲良く歩いていくのであった。




イラストレーター名:ウロタキ