●二人だけのクリスマスパーティ
「……随分と美味そうだな」
目の前にズラリと並んだ料理を眺め、有彦が驚いた様子で溜息を漏らす。
テーブルの上には、ケーキやチキンなど、クリスマスらしい料理がずらり。
そして、ふたり分のシャンパングラスが並んでいる。
「そりゃ、そうだよ。具材から厳選したんだからね」
当然とばかりに胸を張り、不動がグラスにシャンパンを注ぐ。
ふたりで過ごす大切なクリスマス。
具材ひとつであっても、手を抜く事は決して出来ない。
「それじゃ、こだわりの逸品って訳か」
納得した表情を浮かべ、有彦がもう一度料理を眺める。
確かにそう言われてみれば、どれも美味そうな感じがした。
「こだわりどころの騒ぎじゃないよ。どれもここでしか食べられないものばかりだからね」
軽く冗談を言いながら、不動がケーキを切り分けていく。
そこまで凄い食材というわけではないが、何だか面白くなってきたようである。
「……確かにな」
苦笑いを浮かべながら、有彦が皿に置かれたケーキを食べた。
途端にケーキの甘みが口の中に広がり、不動の言葉もまんざら嘘で無いと言う気持ちが過ぎる。
(「ここでキスをしたら、どんな反応をするのだろう……」)
だんだん悪戯心を芽生え、不動が不意打ちでキスをした。
「……って、おい。い、いきなり何を……」
予想外の出来事に、慌てる有彦。
そんな有彦を見て、余裕を見せつつ、微笑む不動。
有彦も反撃とばかりに、不動の頬にキスをする。
そのため、ふたりとも顔が真っ赤。
ふたりとも何を言っていいのか、分からない。
「あっ、そう言えば忘れてた……」
何かを思い出したのか、ハッとした表情を浮かべた。
「メリークリスマス♪」
今まで言い忘れていた大切な言葉。
「……メリークリスマス」
有彦も続けて口にする。
それが何だかおかしくて、ふたりはクスクスと笑うのだった……。
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