●モミの木の下 重なる想い
「そういえば、佳奈芽と知り合ってもう一年以上になるんだよな」
しみじみとした表情を浮かべ、双翼が佳奈芽と出会った時の事を思い出す。
……彼女と出会ったのは、去年の運動会。
それから双翼の誘いで何度か一緒に出掛けるようになり、今年の学園祭で彼女に告白をした。
「でも、二人で過ごすクリスマスは今年が始めてですよ?」
幸せそうな表情を浮かべ、佳奈芽が双翼に答えを返す。
双翼からの告白を受けて、佳奈芽は驚いていたが、嬉しい気持ちと共にホッとした。
だが、彼女から双翼に自分の想いを伝え切れておらず、リードされる事が多かったので、なかなか言い出しにくかったようである。
そのため、今日のクリスマスデートは、佳奈芽の方から言い出した。
「……それもそうだな」
納得した表情を浮かべ、双翼が真っ白な息を吐く。
双翼にとって彼女からの誘いは驚きだった。
どちらかと言えば、佳奈芽はおとなしい性格なので、彼女からデートに誘われる事があるとは、思ってもいなかった。
(「いつまでも、受け身のままじゃ嫌だったから。もっともっと、私は双翼さんが好きだって事を伝えたかったから」)
時間が経つにつれて、佳奈芽の思いが強くなる。
今にも弾けてしまいそうなほど、強く……。
早く双翼に思いを告白したい衝動に駆られているが、いま一歩踏み出す事が出来ない。
その事を考えるだけで、恥ずかしさの方が勝ってしまう。
(「……マヌケな話だが、俺は佳奈芽についてまだ知らない事が多いな」)
だから、もっと彼女を知りたい、と双翼は思った。
それ以上に、もっと彼女と一緒にいたい、とも……。
(「そんな俺の想いを、彼女に伝えたい。不器用だから、普段きちんと彼女にそういう話をしてなかったからな」)
……見つめ合う、ふたり……。
……その気持ちはひとつ……。
そして、ふたりはモミの木の下で、お互いの唇を重ね合わせるのであった。
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