八神・真夜 & 真蜘・暁

●にゃーにゃーくりすます☆

「わーい♪ メリクリメリクリー♪ まよちゃん、お人形みたい〜」
 満面の笑みを浮かべながら、暁が猫変身した真夜の手足を持って、ぷらんぷらんと左右に揺らす。
(「つーか、俺の名前は『しんや』だっての! 初めて会ってから何年も経つのに、まだ覚えんのかお前は!」)
 複雑な心境に陥りながら、真夜が心の中でツッコミを入れる。
(「……それ以前に、俺はどうして、こんな目に遭っているんだ?」)
 自分自身に問いかけながら、真夜がそもそもの原因を探るため、記憶の糸を辿っていく。
 ……今日は楽しいクリスマス。
(「それだっ!」)
 と、納得しかけて、首を振る。
(「いやいや、クリスマスだからって、俺が人形のように遊ばれる理由にならない」)
 あ、危ない。
 危うく納得するところだった、と汗を拭う。
(「だとしたら……」)
 しばしの沈黙の後、
(「……運命!?」)
 物凄くしっくりときた。
 例えるなら最後のピースが嵌ったパズル。
(「そうか、運命なら仕方がない」)
 ようやく納得する答えが出た。
 そのおかげで心の中に引っかかっていた違和感も、まるで霧が晴れたかのように消え失せていく。
(「……って、ここで納得しちゃ駄目だろ。人生最大のピンチ! ……って訳じゃないが、この状況に納得してしまうのだけは避けないと……」)
 巧妙な罠を潜り抜けていく歴戦の兵士と、自分自身の姿を重ね合わせ、真夜が激しくブンブンと首を横に振る。
「あれれ、まよちゃん、どうしたのー? そろそろメリクリしよー!」
 不思議そうに首を傾げ、暁が真夜の顔を見た。
 悪意の無い真っ直ぐな視線。
 とりあえず、真夜にはそう見えた。
(「……まあ、楽しんでいるみたいだし、こんなのもいいか」)
 苦笑いを浮かべ、暁がテーブルの上に着地する。
「それじゃ、メリークリスマス(にゃ)」
 そして、暁の声(と真夜の鳴き声)が辺りに響いた。




イラストレーター名:零壱