下條・史絵 & 斎賀・和深

●ゆづこさんけっせき

 クリスマスの夜。
 雪が降り始めていることに気づいた史絵は、友達を呼びつけた。
 場所は、景色が良く見える丘の上。

「由津子さんは呼ばなかったのかい?」
 そう尋ねるのは、史絵が呼んだ友達、和深だ。
「うんにゃ、メールしたけど反応無いんだ。もう寝てんのかな」
 携帯電話をもう一度見てみるが、やっぱり返事が来ていないようだ。
 と、思い出したかのように和深。
「あー、もしくは昼間変な具材の大福食べ過ぎたせいで寝込んでるかだな」
「あり得るな。ひっどい食べ合わせだったもん!」
 和深の意見に同意する史絵。
 だが、その大福を作ったのも食べさせたのも、実はこの二人だったりする。
「ま、それれはともかく、見てみなねー」
 そういって、史絵が指を指す。
 その先には、しんしんと雪の降る町並みが見えた。
 二人のいる丘から一望できる、綺麗な景色。それが二人の目の前に広がっていた。
「うっわーー! すっげーね!」
 その見事な風景に和深は思わず叫んだ。

 こぽぽぽと、魔法瓶から湯気の立つココアが注がれる。
 魔法瓶の蓋のコップに入ったココアを、二人は交代で飲みあう。
 ふと、景色を見ながら文絵が口を開く。
「ロマンチックだろー? 女二人で見てるのも、ちと勿体無いかも」
「あ、酷いな文絵さん。私じゃ不満かい?」
 その和深の言葉に、文絵は少し慌てながら。
「ごめんごめん! いや寧ろほら、和深さんみたいな良い女に、私何かじゃ役者不足だなってね?」
 そうフォローする。
「もう、調子良いなあ。……けど確かに、来年の今日には彼氏が出来てるかもね。そんで、ここで一緒に景色見てイチャついてたりさ」
 遠くを見るかのように和深は、来年の今日のことを考えてみる。
「それは良いな」
 和深の言葉に同意しながら、文絵も来年のことを思う。
「でもあれだな。史絵さんに彼氏ができたら妬くな」
「嬉しい事言ってくれるじゃない!」
 二人は、じゃれあうようにそんなことを言い合った。
 と、思い出したかのように。
「由津子さんは、ありゃマンゴーに夢中だから、来年も無理だろうしな」
「それは間違い無いな」
 欠席した友人のことを思って、二人は笑みを浮かべる。
「……とはいっても、やっぱり彼氏なんて、想像できないな。来年もこうやってつるんでそうだ」
「あはは! やっぱり? 実は私もそうなんだ」
 どうやら二人にとって、彼氏は少し早いようだ。

 丘の上で笑い声が響く。
 かけがえのない友達と、綺麗な景色と。
 静かな時を賑やかに過ごす、幸せなクリスマスも、たまにはいいかも。




イラストレーター名:桜井鼓太郎