●帰り道
クリスマスの夜。
楽しいパーティーを終えて、みんなで帰る道。
目の前では、賑やかに喋る仲間達の姿が見えた。きっとまだ、クリスマスの気分が抜けずに残っているのだろう。話は盛り上がっているようだ。
その後ろ、彼等から少し遅れた形で茜と菫が歩いている。
二人だけ遅れているのは、茜がお喋りが楽しくて、この時間が長く続けばと、半ば無意識に歩調を遅くしているから。
「クリスマスって、何処の学校でもこんなに賑やかなのかな!」
その菫の言葉に茜は、ちょっと困った顔で応えた。
「……いやそれは無いかと、銀誓館の規模はケタ違いですから」
「ああそうか、人数が多いものね!」
そう、彼等の通う銀誓館学園は、各キャンパスごとに校舎が分かれていたりする。
そこに大勢集まれば、そこに集まるだけ楽しさも増えることだろう。
今日のクリスマスパーティーのように……。
茜の言葉に納得した菫は、ふと思い出したように口を開いた。
「クリスマスって普通祝うもの?」
「それはまあ。……菫様は子供の頃祝って無かったのですか?」
「んー、ええと、神様が違ったもんで。……まあ此処で見てると本当にただのお祭り事っぽいけどね!」
「……あ、それなら、私とお揃いです。……うちも、そうでしたから」
初めて知ったクリスマス。それは、茜も同じであった。
家庭の事情でやらなかったこと、知らなかったこと。
それが、好きな人と同じなら、寂しい気持ちも嬉しさへと変わっていく。
菫はそんな茜の気持ちに気づいていないようで。
「夜とかは明かりが本当に綺麗だよねぇ、毎日だと見慣れて何とも思わなくなるのかな!」
街を彩るイルミネーションを眺めて、菫は瞳を細めた。
「そうですねえ。……菫様は、ああ言う綺麗さは、お好きですか?」
「好きか嫌いかだったら好きだけど、ずっと見てるのはちょっと疲れるかも! 赤金クンは?」
「……あー、私もずっとは眩しくてちょっと嫌ですね」
「普段見るんだったらまあ、夜に少し光って見える雪くらいの方が良いのかもね――」
ふと菫が見上げる先から、ちらちらと雪が舞い降りてきた。
「……雪、ですね」
降ってきた雪の一つを手のひらに受けて、茜は微笑む。
タイミングのいい雪と、この二人だけの楽しい時間に感謝しながら……。
雪が舞い散る中、賑やかな仲間の後ろで、二人の微笑みも重なった。
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