●クリスマス・ベル〜告げる想い、重なる心〜
ふたつ並んだガラスの鈴が真冬の澄んだ星空の下で。
風に小さく揺れて、同時にチリンと鳴る。
ひとつは、夜斗の青いリボンが。もうひとつは、澄の用意した赤いリボンが掛けられている。
そんなベルツリーに仲良く飾られた自分たちの鈴を前に。何故か夜斗と澄のふたりは、お互いすぐ隣にいる相手の顔をまともに見ることができず頬を赤に染めて俯いていた。
その理由は――お揃いの、黒い鈴。
それは、意図して同じものにしたわけでは決してなくて……全くの、偶然であったから。
加えて、鈴を飾った後に初めて聞かされた、ベルツリーにまつわるおまじないの話。
聖夜に佇む美しい音色を纏った大きな木を前に、思いがけなかった様々なことがたくさん重なって。
一緒に飾った揃いのベルが何だか特別なもののように感じ、ふたりは照れくさかったのである。
何だか気恥ずかしくなり、照れと寒さを誤魔化すように。
澄は自分の長いマフラーを、ふわりと夜斗の首にも巻いた。
光に反射したマフラーは『Yellow Snow』の名に相応しく夜空を舞う雪のように煌き、目に映る色の印象と同じでとても温かくて。
そして――ふたりを繋ぎ、その距離を必然的に近づける。
そのことにハッと気がついて。
余計に恥ずかしくなった澄は、どうしていいか分からずにそのまま固まってしまう。
「さ、寒いよ……ね。こ、れ2人用ら、しいか……ら」
ようやくそう言葉を発してみたものの。頭からぷしぅと何かが噴出しているかのように、彼女は耳まで真っ赤にさせてしまっていた。
そんな彼女の様子を見た夜斗は瞳を細め、思わず噴出してしまうが。
落ち着きを取り戻すと、そっと澄を自分の胸へと引き寄せる。
同時に、小さな彼女の全身が、じわりと伝わる彼の温もりに包み込まれて。言葉で紡がれた溢れる気持ちが耳をくすぐった。
「ずっと、俺の隣に居て欲しいと思ってる。どうやら俺は、澄先輩の事、本当に好きみたいだから」
抱き寄せられて告げられる、夜斗の思いを聞いて。澄は一層真っ赤になって俯きながらも。
コクンと、ひとつ頷いたのだった。
ささやかな音に飾られた、聖夜限りの特別な『Bell Tree』。
おまじない通り、聖夜を越えたふたつのお揃いのガラスの鈴は、共鳴し合うだろう。
ふたりの思いや、重なる心と同じように。
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